パソコン専門店や家電量販店のPCパーツコーナーでは、ベアドライブ(HDDベア・ベアHDD)と呼ばれるむき出しの状態のHDDが販売されている。HDDは、CPUと並んで自作PCに欠かすことができないPCパーツの一つ。組み込む機器によって、内蔵HDDにも外付けHDDにもなり、ホコリや振動などに細心の注意を払えば、素のままでも使える。HDDだけの「ベア」なので、同じ容量で比較すると、ケースに入った一般的な外付けHDDより安い。ただし、為替変動の影響を受けやすく、時期によって価格が変わりやすいのが難点だ。

●上位4社だけで99%の寡占市場 2013年の累計販売台数は前年並み

家電量販店などの実売データを集計した「BCNランキング」によると、HDDベアは、世界規模でメーカーの統合や淘汰が進み、2012年5月以降、ウエスタンデジタルを筆頭に、シーゲート、東芝、HGST(旧日立グローバルストレージテクノロジーズ)の上位4社で99%以上を占める。ウエスタンデジタルは、11年、12年に引き続いて13年もシェア49.2%で、メーカー別販売台数1位を獲得。傘下のHGSTを含めると、シェアは6割近くに達し、2番手のシーゲートを大きく引き離している。

13年のHDDベアの累計販売台数は前年比102.8%と、ほぼ前年並みだった。1月から3月頃までは価格が安かったことで、通年での税別平均単価は前年より230円ほど下がったが、12年12月と13年12月を比較すると、円安や、単価の高い3TB/4TBモデルの販売台数増加などの影響を受けて、1400円ほど上昇している。今後、さらに値上がりすると予想する人は、今のうちに買っておこう。

●ハイエンドからローエンドまで、ウエスタンデジタルの豊富なラインアップ

3年連続でシェアトップを獲得したウエスタンデジタルは、さまざまなニーズに応えるため、ハイエンド製品から求めやすい価格のスタンダード製品まで、幅広いラインアップを展開。RAID使用に最適化したNAS向けモデル「WD Red」も用意する。また、それぞれのシリーズ名に、パッケージカラーとあわせた色の名を入れ、シリーズごとの特長や用途をわかりやすく示している。

容量ごとに別機種としてカウントすると、2013年のHDDベアの販売台数1位は、ウエスタンデジタルの「WD Green」の「WD20EZR(2TB)」だった。「WD Green」は、ささやき声と同じ程度の静音性を実現した外付け・増設向けのスタンダードモデル。2位と18位は、1位の容量違いモデルで、2TB、3TB、だいぶ離れて1TBの順に売れている。HDDベア全体では、2TBが34.4%、3TBが24.0%、1TBが20.4%を占め、売れ筋は、1TB以上の大容量モデルだ。ただし、全体の12.6%を占める2.5インチサイズに限ると、500GBと1TBがそれぞれ4割弱を占めて拮抗している。

●イイトコ取りのSSD/HDDデュアルドライブ「WD Black2」に注目!

ウエスタンデジタルのベアドライブ製品のなかで、13年12月発売の世界初のSSD(ソリッドステートドライブ)とHDDのデュアルドライブ「WD Black2」が話題になっているという。「WD Black2」は、高速アクセスの120GBのSSDと1TBのHDDを組み合わせた一つのドライブながら、PCからは二つのドライブとして認識され、高速アクセスと大容量を両立した「イイトコ取り」のデュアルストレージ。対応サイズは2.5インチ、対応OSはWindows XP(32ビット)から最新のWindows 8.1まで。価格はオープンで、実勢価格は3万円前後だ。「BCNランキング」ではHDDに分類しているが、一部はSSDそのもの。起動の遅さやHDDの少なさが気になる少し古いノートPCの内蔵HDDの換装に最適だろう。

HDDベアの主な用途は、自作PCの組立て、手持ちのPCの強化・修理、別売のHDDケースと組み合わせて使う「自作外付けHDD」の三つ。HDDケースの種類は多く、収納できるHDDの数や価格帯にも幅があり、自由度は高い。CDを超えるクオリティのハイレゾリューション・オーディオ(ハイレゾ)音源や、4K/8K映像など、今後ますます、扱うデータの大容量化が進むだろう。そうした大容量データの保存先として、HDDを活用する機会も増えると思われる。専門用語が多くてどれを選べばいいのかわからない、取りつけ作業が難しそう、鍵のかかったショーケースに入っていてパッケージに自由に触れられないなど、PC初心者にはやや敷居が高いかもしれないが、HDDをうまく活用して、PC環境をより便利に、快適にしよう。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。