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『バッド・デイ・ドライブ』(12月1日公開)

 舞台はベルリン。車で子どもたちを学校に送り届けることになった金融ビジネスマンのマット(リーアム・ニーソン)のもとに「車に爆弾を仕掛けた。指示に従わなければ爆破する」という謎の着信が入る。

 マットは何も分からぬまま運転を続けるが、目の前で同僚の乗った車が爆破される。マットは正体不明の男の指示に翻弄(ほんろう)され、警察とマスコミからは容疑者として追われながら、恐怖におびえる子どもたちを乗せて車を走らせ続けるが…。

 スペイン映画『暴走車 ランナウェイ・カー』(15)のリメークで原題は「Retribution=報復」。妻のヘザーを『シンドラーのリスト』(93)以来、30年ぶりにニーソンとの共演となったエンベス・デイビッツが演じる。監督は『プレデターズ』(10)のニムロッド・アーントル。

 主人公のマットは仕事人間で、子どもたちからは疎まれ、妻は離婚を考えている。その彼が珍しく子どもたちを乗せた新車に爆弾が仕掛けられ、しかも離席すると爆発するという。目の前で同僚が爆死し、警察からは実行犯と思われて追われるという、まさに四面楚歌の絶体絶命状態という設定が面白い。

 「ザ・ピクチャー・カンパニー」は、これまでもニーソン主演で『フライト・ゲーム』(14)『トレイン・ミッション』(18)を製作してきた。どれも一種の密室劇だが、飛行機、電車の次は、今回は車ときた。

 しかも今回のマットは航空保安官でも元警官でもなく、犯罪に対しては無力な一般人とくる。これだけの“縛り”を設けながら、91分で解決させる小気味よさは、優れた脚本(クリストファー・サルマンプール)と、前2作のジャウム・コレット=セラから監督を引き継いだアーントルの力が大きい。

 ニーソンが、認知症の影響で記憶障害に悩む殺し屋を演じた『MEMORY メモリー』(22)を見た際に、さすがに老けたし、そろそろアクション路線からは撤退かと思った。

 続く『探偵マーロウ』(22)で、今後はこうしたアクションなしの方向に向かうのではと予測したのだが、この映画でアクション路線に復帰してきた(とはいえ、ほとんど車の中ではあるのだが…)。しかも孫のような年の子役たちとの親子役にも違和感を抱かせないところもすごい。こうなると、また次に期待してしまう。

『ナポレオン』(12月1日公開)

 18世紀末、革命の混乱に揺れるフランス。若きナポレオン(ホアキン・フェニックス)は軍人として目覚ましい活躍を見せ、軍の総司令官に任命される。

 そして夫を亡くしたジョセフィーヌ(バネッサ・カービー)と恋に落ち結婚するが、ナポレオンの溺愛ぶりとは裏腹に奔放なジョゼフィーヌは他の男とも関係を持つ。いつしか夫婦関係は奇妙にねじ曲がっていく。

 その一方、軍人としてのナポレオンは快進撃を続け、クーデターを成功させて第一統領に就任、ついにはフランス帝国の皇帝にまで上り詰める。

 政治と軍のトップに立ったナポレオンと、皇后となり優雅な生活を送るジョゼフィーヌだったが、2人の心は満たされないままだった。やがてナポレオンは戦争にのめり込み、せい惨な侵略と征服を繰り返すようになる。

 本作はリドリー・スコット監督が、デビッド・スカルパの脚本を得てフランスの英雄ナポレオン・ボナパルトの人物像を新解釈で描いた歴史スペクタクル。ホアキンはいつもの役ほどではないものの、ここでもエキセントリックな姿を見せる。

 壮麗なクラシック音楽が流れる悠揚な長尺の歴史劇を見ていると、時に睡魔に襲われることがあるが、この映画もそうだった。何だかスタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』(75)を見た時と似ていると思ったら、スコット監督は『バリー・リンドン』の大ファンであり、『バリー・リンドン』は、キューブリックがナポレオンを撮るためのリサーチが反映されたものだという。なるほどちゃんとつながった。

 この映画で要となるのは、軍人、私人としてのナポレオンの二面性にある。カリスマ的な魅力を持ち、軍才もある一方、彼が率いた戦いで300万人以上が戦死しているという事実。一体彼は英雄なのか悪魔なのか。

 スコット監督が「モスクワを征服しようとしている男が、なぜパリにいる妻の行動に気をもんでいるのかと疑問に思った」と製作の動機の一端を語るように、この映画はスペクタクルな戦闘シーンと、ナポレオンとジョセフィーヌとの手紙を軸とした奇妙な夫婦関係を並行して描いているところが面白い。

(田中雄二)