『小さいおうち』(C)2014「小さいおうち」製作委員会

2020年の東京オリンピック開催まであと6年。1964年に東京で第18回夏季オリンピックが開催されて以来、56年ぶり、2回目となるが、実は“幻の東京オリンピック”があったことはご存知だろうか? 現在公開中の映画『小さいおうち』では、この“幻の東京オリンピック”について家族が話をする場面が登場する。

『小さいおうち』動画

このほど公開された映像は、東京の郊外に建つ小さいおうちに暮らす平井家の人々が、1940年(昭和15年)にアジア初のオリンピックが東京で開催されることを楽しそうに話す場面だ。当時の日本はアジアの各国へ進出し、勢力を拡大。神武天皇即位から2600年を祝う紀元二千六百年記念行事としてオリンピック開催が計画されており、一家が競技場の建設や道路の整備を通じて日本経済の発展に期待する場面は、どこか現在の様子と重なる部分がある。

しかし、開催決定から約2年後、日中戦争の影響などにより、政府は開催権を返上。代替のヘルシンキでの開催も、第二次世界大戦勃発で中止になってしまう。市民の穏やかな暮らしは、戦争によって奪われ、平井家の人々も思わぬ運命を辿ることになる。幸せな日常に静かに忍び寄ってくる“戦争”。山田監督がこのシーンに込めた意味とは? 何気ない一家だんらんの場面だが、深いメッセージが込められたシーンだ。

映画『小さいおうち』は、中島京子の直木賞受賞小説を映画化したもので、昭和初期に東京郊外に建っていた赤い屋根の“小さいおうち”で女中として働いていたタキが見た“秘められた愛”の物語が、昭和と平成を通して語られていく。

『小さいおうち』
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