佐藤二朗  撮影:星野洋介 佐藤二朗  撮影:星野洋介

飄々としつつも強烈な印象を残す存在感と確かな演技力で、ドラマに映画にと活躍中の佐藤二朗。近年は映像作品にひっぱりだこの彼が脚本と出演を兼ね、20代後半から続けている舞台活動が演劇ユニット〈ちからわざ〉だ。その第12回公演は、2009年の初演当時から再演を望む声が多かったという『はるヲうるひと』。大高洋夫、野口かおるという初演からの続投組に加え、今回が初舞台となる韓英恵を迎えた2014年版。ユニット初の再演に際し、佐藤に話を聞いた。

ちからわざ『はるヲうるひと』チケット情報

舞台は島中に「置屋」が点在する売春島。女たちを仕切る置屋の主人(大高)のもと、腹違いの弟(佐藤)は黙々と使い走りをこなし、妹(韓)は不感症のために店に出られないでいた。行き場のない想いを抱えつつ、日々を無為に過ごしていた彼らだったが…。再演について佐藤は、「これまで自分で脚本を書いて出演もしていたので、堤さん(プラチナ・ペーパーズの堤泰之が毎回演出を担当)と打ち合わせする時間が多く割かれていたんですね。でも今回は再演なので、役者に没頭できる。それによって作品がどう見えてくるのかが楽しみなんです」と話す。

とはいえ“売春”という衝撃的なモチーフ。チラシには「繋がることができない男女と、繋がることの意味が分からない女たちの物語」とある。佐藤に本作の着想について尋ねると、「僕は“負”を背負う人間に惹かれるところがあって」との答えが返ってきた。「映画『仁義なき戦い』の川谷拓三さんや、ドラマ『傷だらけの天使』の水谷豊さんなど、とことんダメな奴が必死になってもがく。そういった物語が昔から好きでした。血も涙もないとことん悪い奴というのも好きで、今回の大高さんの役がそれなんですけどね(笑)。そんな人物像を、制約に縛られず徹底的に描けるのは、演劇のいいところだと思います」と語る。

当初はコントオムニバスのスタイルをとった時期もあったというが、旗揚げから18年。佐藤を取り巻く状況も変わってきた。「6年前に映画『memo』で脚本と監督をさせてもらって、物語を書くことへの気持ちが高まったところで書いたのが本作。分岐点となった特別な作品だし、ありがたいことにテレビや映画での出演が多くなった今、お客さんの思う“佐藤二朗”とは違う顔をお見せできる舞台だと思います」と話す佐藤。「思えばいつかの飲み屋で、『俺も出てみたい』とポロッと言ってくれた大高さんに、『ホントですねぇ?』と無理やり出てもらってよかった」とニヤリ。演劇人の顔に、いつもドラマで見せるあの笑顔が重なった。

4月3日(木)から13日(日)まで東京・ザ・スズナリにて。チケットの一般発売は2月15日(土)午前10時より。なお、チケットぴあではインターネット先行抽選「プレリザーブ」を実施、2月4日(火)午前11時から9日(日)午前11時まで受付。

取材・文:佐藤さくら

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