もちろんインターネットなどで日本の状況を知る機会はありますので、「公共の場での授乳」問題が炎上したことも伝え聞いていましたから、実際に公共の場で授乳する立場の身としては「子どもが小さい今の時期、ミャンマーにいて良かったかもしれない」と思ったりもしました。

でも実は、日本に一時帰国した時もミャンマーの感覚のまんま、ゆったり目のセーターの下に子どもをもぐらせて授乳したりしちゃいまして。

――逆に日本では、どのように感じられましたか。

イワサ:日本でも年配の女性などは声をかけてくれたりしましたし、特に批判的な視線は感じなかった・・・というか、ミャンマーで周囲のことを気にしない習慣がついていたためかもしれませんが(笑)、引け目を感じたりすることもありませんでした。

ある意味のポジティブさといいますか、鈍感力といいますか、「自分と子どもは社会から認められて祝福される存在」という価値観がミャンマーで身についたおかげで、日本でも授乳することに対して周囲の目に鈍感になれたんじゃないかなーと思います。

――「自分と子どもは社会から認められて祝福される存在」!それは素敵な価値観ですね!

イワサ:ただ日本では授乳室や赤ちゃん休憩室が充実しているので、一時帰国中もヤンゴンほど外で授乳する機会はなかったんですよ。

日本の赤ちゃん設備、最高です!!!

――ミャンマーと日本、どちらにもいいところがあるということでしょうか。

イワサ:ミャンマーで子育てをしていると、日本と異なる習慣に驚くこともあります。

例えば幼稚園で誰かの誕生日があると、親がケーキを持っていって皆にふるまうのですが、たとえ2歳児・3歳児のクラスでもコッテコテで甘々のケーキが出てきます。砂糖や着色料、食品の原材料に関しては、だいぶこちらの国はおおらかです。

ママだからといって、ご飯を手作りしない日があっても別にいいんだ、と感じたこともありました。というのもミャンマーは外食・中食文化が浸透していて、どんな飲食店でも持ち帰りや宅配ができるんです。夕飯時になると、近くのローカル飲食店の男の子は、宅配の食事を届けるのに大忙しです。

夫の会社のスタッフの子も、帰り際にたくさん麺料理を買っているなーと思ったら「夕飯に食べるのでお母さんから買ってくるのを頼まれました」なんて言っています。

日本では、栄養、献立、キャラ弁など、家族や子どもの朝昼晩の食事に気を使って、毎日頑張っているママが多く、大変素晴らしいことだと思っています。でも、全部が全部ママの役割、ママの責任だ!と気負ってしまうと、疲れる日もあるのではないでしょうか。

こちらの国の文化に触れたおかげで、日本に戻った時も「今日はうどん屋さんでうどん買って帰って食べようねー」なんて、気軽にテイクアウトしています。まずは自分が楽する方法を選ぶ習慣がつきました(笑)。

またミャンマーは人件費が安いので、お手伝いさんやシッターを頼みやすいんですね。我が家も子どもが1歳の時から同じシッターさんに来てもらっていて、いまでは第二の母のような存在になっています。

これに慣れると、他力を使うことに躊躇がなくなりました。日本に一時帰国した時にもベビーシッターのマッチングサービスを使ったり、友人の娘さんにバイトしてもらったり、他力をいろいろ使っています。

――そんな風にミャンマーでの子育てを経験されているイワサさんから、インタビューの最後に、日本のママたちへメッセージをお願いできますか。

イワサ:「公共の場での授乳」での施設整備にしても、日々の子どもの世話や家事にしても、日本には日本の素晴らしさがあって「帰りたいなー」と思うこともありますし、一時帰国中は「やっぱり日本っていいなー」と感じることも、それはそれはたくさんあります。

でももしその環境にプレッシャーや息苦しさを感じてしまったら・・・時には「ミャンマー流」や「ヤンゴン風」を取り入れてみるのも、ひょっとしたら悪くないかもしれません(笑)。

【取材協力】イワサマキコさん

2014年よりミャンマー・ヤンゴン在住。現地でIT企業をやっている夫、ローカル幼稚園に通う3歳の息子との3人暮らし。日々移り変わるミャンマーについて「マキコさんのミャンマーだより」ほかで発信中。

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。