能作品が現代演劇に。「現代能楽集Ⅶ」が開幕

2014.2.5 17:40配信
『葵上』 撮影:田中亜紀 『葵上』 撮影:田中亜紀

世田谷パブリックシアターの芸術監督、野村萬斎が企画・監修を務める人気シリーズ「現代能楽集」。その第7弾となる『花子について』が、2月5日、東京・シアタートラムで幕を開ける。今回モチーフとなっているのは、能『葵上』、狂言『花子』、三島由紀夫の「近代能楽集『班女』」の3作。作演出は「ペンギンプルペイルパイルズ」の倉持裕が手がけている。

1作目の『葵上』は、『源氏物語』の「葵」巻を素材にした能作品。光源氏に別れを告げられた女(六条御息所)が、正妻の葵上の前に生霊となって現れるという、名作中の名作である。源氏に対する愛、さらに葵上に対する憎悪が六条を鬼へと変えてしまうわけだが、そんな女の怨念を表現するのに倉持が選んだのは、なんと現代舞踊。黒田育世と宮河愛一郎が六条役を担い、音、光、布、風などを効果的に用いつつ、ふたりの身体性は、言葉以上に六条の情念を物語っていた。

2作目の『花子』は、歌舞伎の『身替座禅』としても知られる喜劇。不倫相手に会いたい夫は、ある男に自分の身替わりを頼み、妻を騙そうとするのだが…。この倉持版では、舞台を現代の町工場へと変更。それをうまく生かしつつ、恋に夢中になった夫の滑稽さや、夫の裏切りを知った妻の恐ろしさなど、作品自体が持つ普遍的な面白さをうまく浮かび上がらせている。夫役には倉持作品の世界観を熟知する「ペンギン~」の小林高鹿。妻役にはコメディセンスの塊とも言える片桐はいり。そんなふたりの攻めの芝居をすべて受け切るのが、「大人計画」の近藤公園。3人の絶妙なバランスも相まって、秀逸なコメディへと仕上がった。

3作目の『班女』は、待つ女と待たれる男と待たない女の三者が絡み合う不思議な物語。美しい女・花子はかつて愛し合った吉雄を待ち続け、誰からも愛されない女・実子は待つことを諦めている。そんな彼女たちの前についに吉雄が現れ…。切なく、強烈な愛の物語である。吉雄を待って、待って、そのうちに気が狂ってしまった花子。その姿は哀れにも映るが、待ち続けることはすなわち愛し続けること。それができた花子は、ある意味とても幸福な女性なのかもしれない。花子を好演したのは、透明感の中に芯の強さを感じさせる西田尚美。またネットの書き込みやブログなど、現代ならではの要素が、作品の肝として非常に効果的に働いた。

さまざまなかたち、時代の愛の物語が、現代劇へと昇華された珠玉の小品集と言えるだろう。公演は2月16日(日)まで東京・シアタートラムにて上演。

取材・文:野上瑠美子

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