映画『晩春』デジタル修復プロジェクト

映画会社の松竹が現在、小津安二郎監督の名作『晩春』のデジタル修復の資金を、ネットなどを通じて資金を集めるクラウドファンディングを用いて募っている。時間が経つごとに劣化してしまうフィルムの保存と、新たな映画ファンの獲得をめざす試みだ。

映画のフィルムは時間の経過と共に劣化する。また作品によっては上映プリントが保管されておらず、16ミリのマスターしか存在しない作品も数多く存在する。東京国立近代美術館フィルムセンターでは映画フィルムの収集・保管・復元を行っているが、予算の関係からすべての作品を復元・保管するにはいたっていない。現在、名作映画のデジタル修復作業は少しずつ進められているが、1秒が24コマで構成されているフィルムを1コマずつスキャンし、色を復元し、キズとゴミを除去するために膨大な時間と予算がかかる。

そこで本プロジェクトでは小津監督の『晩春』を最新のデジタル技術で修復し、保存するための資金をクラウドファンディング“READY FOR?”を通じて募集。金額によってデジタル復元された作品のブルーレイディスクがプレゼントされたり、完成披露試写会に招待される。昨年の11月から募集を開始したところ、2月3日現在で目標額の70パーセントにあたる349万円が集まっており、今後も資金提供者は増えそうだ。

映画フィルムの復元・保存は、名作を未来に伝える重要な作業でありながら、国や制作会社によって進捗度合いが大きく異なっており、まとまった予算がとれずに手をこまねいている間にもフィルムの劣化は進んでいる。映画ファンが少しずつ力と資金を出し合って、名作を甦らせる本プロジェクトのような事例が今後も、さらに増えていくのではないだろうか。