キャラメルボックス『ヒトミ』稽古場より 実川貴美子 キャラメルボックス『ヒトミ』稽古場より 実川貴美子

ハートフルな作風で、多くのファンの心を掴む人気劇団キャラメルボックス。一貫して“人が人を思う気持ち”をテーマにした作品を作り続けているが、その切り口はSFから時代劇まで様々。そんな中でも、派手な演出を排し、俳優の感情の揺れを重視する<アコースティックシアター>と称するシリーズがこの春、2本立てで上演される。そのうちの1本、『ヒトミ』の稽古場を1月末、取材した。

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作品は、交通事故で首から下が麻痺してしまったピアノ教師・ヒトミが主人公。彼女が新開発された装置“ハーネス”の力を借り、ふたたび立ち上がるまでの葛藤と希望の物語。ヒトミを取り巻く人々の温かさ、恋人・小沢との愛の形に、傑作との呼び声も高い作品だ。1995年に初演され、2004年の再演を経て、10年ぶりに上演される今回、ヒトミを演じるのは入団12年目の実川貴美子。ヒロイン経験豊富な彼女は、涼やかな透明感を持って、稽古場の真ん中に立つ。静かな笑顔も、顔を上気させ思いを吐露する必死な表情も、ヒトミの心に沈む悲しみが伝わって来て、すでに自分なりのヒトミ像を掴んでいるよう。小沢を演じる多田直人とのコンビネーションも良く、歴代のコンビとはひと味違う、フレッシュな恋人同士になりそうな予感がした。

演出の成井豊は、たびたび「言葉の表面上の意味だけを考えて話さないで」と口にする。セリフとは裏腹な感情を抱く心理、あるいはその言葉を受け取った側はどんなスイッチが入るのか、そのためにはそのセリフをどんなテンションで言えばいいのか。ひとつのセリフの裏に隠れた膨大な情報を、丁寧に俳優に伝えていく。その演出を受け、真摯にひとつひとつの言葉と向き合っていく俳優たち。おそらくこの『ヒトミ』という作品は、劇団員たちにとっても大切な作品なのだろう。おだやかな稽古場の空気の中にも、真剣な表情からは静かな闘志が伝わる。彼らが繊細な作業を積み重ね、新たに生まれ変わる名作に、期待したい。

ほかに出演は、劇団唐組の稲荷卓央ら。公演は『ヒトミ』〈2014 バレンタインスペシャル〉が2月13日(木)・14日(金)に東京・EX THEATER ROPPONGIにて。その後〈2014アコースティックシアター・ダブルフィーチャー〉として『ヒトミ』『あなたがここにいればよかったのに』を回替わりで上演するツアーが、2月21日(金)から25日(火)に大阪・サンケイホールブリーゼ、3月1日(土)・2日(日)に愛知・名鉄ホール、3月6日(木)から23日(日)に東京・サンシャイン劇場にて上演される。チケットはいずれも発売中。なお、チケットぴあでは東京公演平日限定で、初めてキャラメルボックスを観る方を対象とした「ため★チケ(1000円/各回限定枚数)」の販売もあり。