ニキ・ラウダ

伝説のF1王者ニキ・ラウダとライバルであるジェームス・ハントが繰り広げた1976年の歴史に残る死闘を描いた『ラッシュ/プライドと友情』がまもなく公開。ニキ・ラウダ本人が来日し、映画の魅力や当時の思い出を語ってくれた。

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2年連続の王者獲得に向けて快調にポイントを重ねていたラウダだったが、雨のドイツGPでクラッシュに見舞われ瀕死の重傷を負う。映画はふたりのライバル関係に焦点を置き、事故から42日後の奇跡の復活、そして日本での最終決戦の模様を克明に描く。

ラウダを演じたのは『グッバイ、レーニン!』、『ベルリン,僕らの革命』で知られるドイツ人俳優のダニエル・ブリュール。撮影を前にブリュールとも顔を合わせたというが、その演技について「最初に見た瞬間からやられたよ。英語やドイツ語の話し方から手の動かし方、ボディランゲージにいたるまで私そのものだった」と惜しみない称賛を送る。

映画も観客として楽しんだというがやはり、自身が経験した壮絶な事故や肺に直接、管を挿入し吸引するという過酷な治療のシーンは特別な思いが込み上げてきたという。「当時は治療で頭がいっぱいだったけど、映画を通じて外から見ると、周りがあの状況をどう見ていたのかが分かったし、つらくもあった。どんな痛みかって? 肺が引っくり返るような感じだね」。

そんな瀕死の重体のドライバーがわずか1か月半でレースに復帰するなど、常識では考えられないことだが、ラウダは「私は普通ではないんだよ(笑)。常人離れした強さを持ち、怖れ知らずなんだ。だからこそ、F1ドライバーなんていう命を天秤にかけるような職に就くことができたんだ」と平然と語る。

映画でも描かれるが、思ったことをズバリと口に出す性格はいまでも変わらない。現在「メルセデスAMG」の非常勤の会長を務めるが、最新鋭のマシンを見て血が騒ぐことは? と尋ねると「運転は若い者に任せるよ。ただ、間違った時代に生まれたと思うことはあるね。いまのマシンの方が制御はずっと簡単で安全だ。10倍は稼げただろうね」とニヤリ。ちなみにプライベートではいまでも車の運転はもちろん、飛行機も操る。「ついスピードを出し過ぎて、レーダーに引っかからないようにするのが大変なんだ」。

ライバルのハントは引退後の1993年、45歳の若さで亡くなった。ラウダは「ハントがいないのは寂しいよ。ビールでも飲みかわして一緒に映画を観たかったね」とその早逝を惜しむ。一方で、映画で描かれるハントのプレイボーイぶりについては「もっとすごかったさ(笑)」と証言。「でもきっと彼もこの映画が気に入るよ。特に飛行機の中でのCAとのシーンとかね(笑)。彼と映画について語り合うならやはりこのシーンのことだろうね」。

『ラッシュ/プライドと友情』
2月7日(金)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
(2月1日、2月2日先行上映)

取材・文・写真:黒豆直樹