『KILLERS/キラーズ』に主演した北村一輝

北村一輝が主演を務め、日本とインドネシアの映画人がタッグを組んで製作した『KILLERS/キラーズ』が公開されている。本作で北村が演じたのは独自の美学を貫く殺人者・野村だ。北村はなぜ、「脚本を読んでもまったく理解できないし、感情移入できないし、共感できなかった」という野村役を引き受けたのだろうか? 本人に話を聞いた。

その他の画像

本作は、女性を捕らえては残忍な方法で殺害し、その一部始終を撮影してネットに公開している男・野村(北村)と、彼が放った映像を観てしまったことから殺しにのめりこんでいくインドネシアのジャーナリスト・バユ(オカ・アンタラ)の奇妙なドラマを描いた衝撃作だ。

これまで日本で撮影した出演作が海外で上映されることはあったが、北村が海外の映画人とタッグを組むのは初めて。しかも送られてきた脚本に描かれていたのは「まったく理解できない」人物だった。「そこで監督に会い『なぜこの映画を撮りたいのか?』と質問しました。すると監督たちに『アジアの映画が世界に出て行く時には、アクションやバイオレンスを描いた方が自分たちの技術や力を見せやすいんだ』と聞き、そうであれば是非参加させていただいて、できる限り挑戦したいと思いました」

北村がそう回答したのは「いろんな国の人たちと映画を作りたい」という想いを持ち続けてからだ。「僕はインドネシアだけでなく、アフリカ、南米など国に限らず演じたいですね。最近では外国で演じる俳優さんも増えていますが、言葉の問題もあるし、新しい考え方を取り入れない部分もあり苦労もしますが、僕は自分を変えていきたいし、いろんな国の価値観の中に参加することで刺激を受けていたいです」。

インドネシアでの撮影は日本の現場と異なる場面がいくつもあったという。「監督はとても“感覚的”でしたね。じっくり撮る日本映画の良さもありますが、インドネシアは日本の3倍のスピードで進んでいきました。日本では準備も丁寧で時間も割きます。向こうは60点のテイクを何パターンも撮影して編集する際に処理していく。最終的には監督が決めますが、様々なパターンを試せる自由がありました」

習慣も、撮影に対する考え方も違う環境で撮影が進む中で北村が感じたのは“観客に伝わること”の大切さだという。「例えば、英語のセリフを舌をまいて“英語っぽく”喋っても全然伝わりませんでした。今回は監督とも話し合って、海外の人が字幕なしでも伝わるようにアフレコで何度も録り直しました。“観客に伝わる”という点では監督は揺るがない人でしたから、とても信頼していました」。

これからも他の国や環境で撮影していきたいと語る北村。本作を機に、彼の演技は海や国境を超えて多くの人に伝わっていくのではないだろうか。

『KILLERS/キラーズ』
公開中