一年のうち最も多く携帯電話が売れる春の新生活シーズンに向けて、1月中旬、各キャリアは学生とその家族を対象にした「学割キャンペーン」を開始した。今春のメインは、3キャリアが取り扱う「iPhone 5s/5c」と、「ファブレット」と呼ばれる6インチ以上の大画面モデルが加わったAndroid搭載スマートフォン。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2014年1月のスマートフォンの販売台数は、前年同月比103.0%を記録。前年をわずかながら上回る好調なスタートを切った。

●「iPhone 5s/5c」が引き続き上位を独占 ドコモのiPhone率は3割を切る

キャリアごとに容量を合算すると、2014年1月の携帯電話の販売台数1位は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」だった。1位は2013年11月以来、3か月連続。2位はauの「iPhone 5s」、3位はドコモの「iPhone 5s」で、1位から5位まで、順位は前月と同じだった。

6位は、ドコモの「iPhone 5c」から、同じドコモの「Xperia Z1 f SO-02F」に入れ代わり、前月は14位だったauの2013年夏モデル「URBANO L01」が値下げ効果で10位に浮上した。

日本固有の慣習を皮肉って、ガラパゴス携帯、略して、「ガラケー」とも呼ばれる従来型携帯電話は、11~30位の間に、防犯ブザー付き端末(みまもりケータイ、mamorino、キッズケータイ)のほか、auの「GRATINA」、ドコモの「P-01F」「SH-03E」など、計9機種が入った。キャリアごとに集計するとそれぞれ順位が上がり、ランキングのトップ10のうち、ドコモは4機種、auは2機種、ソフトバンクモバイルは3機種が従来型だった。

旧機種を含めたiPhone全体のシェアは、「iPhone 5s/5c」の発売直後の2013年9~11月は50%、やや日のたった12月、14年1月にも40%を超え、飛び抜けて高い。スマートフォンに限ると、シェアはさらに10ポイントほど上昇する。ただしキャリアによってシェアは変わり、取り扱い年数の長いソフトバンクモバイルが最も高く、最後発のドコモは最も低い。

●「ケータイ」の実際の比率はすでに1割程度 さらなる縮小は不可避?

昨年秋、新製品が久々に発売になり、一部メディアで、「ガラケー復権の兆し」「ケータイ新製品発売、根強い人気」などと報じられた。しかし、従来型携帯電話は、ずっと前年割れが続いている。スマートフォンが本格的に普及しはじめた2011年の販売台数を100とすると、2012年は57.6、2013年は38.0と、3年間で半分以下まで落ち込んだ。2013年12月も14年1月も、販売台数は前年同月を下回り、71.5%と83.5%。普及率や実際の利用率を考慮せずに、単純に販売データから判断する限り、「復権」とはいい難い。

スマートフォンの販売台数が頭打ちなので、携帯電話全体の販売台数に占める「従来型」の比率は、この1年間、2割前後で推移し、最も低かった2013年11月でも15.6%にとどまり、下げ止まっているようにみえる。

しかし、この数字はスマートフォンとの同時購入が多いとみられる「みまもりケータイ」をはじめとする防犯ブザー付き端末を含むもの。携帯電話を「スマートフォン」「ケータイ(一般・シニア向け)」「ケータイ(子ども向け)」の三つに分類すると、一般・シニア向けのケータイの比率は、2013年通年で13.3%に過ぎない。スマートフォンへの移行を推し進めたいキャリア、なかなか買い替えない既存ユーザー、中古市場の活性化など、複数の要因が重なって、わずか数年の間にここまで下がってしまった。「復権」どころか、継続かさらなる縮小か、今後を左右する分岐点に立っているのではないだろうか。

2013年秋発売の新製品のうち、ドコモでは、GPSとFelica(おサイフケータイ)に対応していない「P-01F」が売れていることから、今後、ケータイは通話やメールなど、基本機能に特化したベーシックモデルが主流になりそうだ。こうなると、ラインアップはさらに少なくなっていかざるを得ない。ケータイ全盛期に人気を集めていた”全部入り”のハイエンドモデルは、フルセグ(地上デジタル放送)/ワンセグ、防水・防塵などに対応した大画面のAndroid搭載スマートフォンに引き継がれている。スマートフォンやiPadなどのタブレット端末を併用していない「ケータイ1台もち」のケータイ愛用者は、今のうちに買い替えるか、ユーザーアンケートなどで利用頻度の高い機能とともに開発継続を訴えたほうがいいかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。