『2014年・蒼白の少年少女たちによる「カリギュラ」』稽古場より 『2014年・蒼白の少年少女たちによる「カリギュラ」』稽古場より

蜷川幸雄演出の舞台『2014年・蒼白の少年少女たちによる「カリギュラ」』が2月15日(土)から上演される。演じるのは、彩の国さいたま芸術劇場を拠点として2009年に結成された若手演劇集団、さいたまネクスト・シアター。演出家の高度な要求に応えることで公演のたびに成果を積み上げてきた彼らが、次はどのような飛躍を見せるのか。創作現場を取材した。

『2014年・蒼白の少年少女たちによる「カリギュラ」』 チケット情報

アルベール・カミュの戯曲『カリギュラ』は、最愛の妹を亡くした絶望から狂気に取りつかれたローマ皇帝の姿を描く。無差別処刑という彼の行為は残忍きわまりないが、理不尽こそがこの世界なのだという逆説の説得力が、事態を単なる暴挙として片づけない。過剰な展開の中に透徹した思考をたたえるその劇世界に、蜷川は若い頃から共鳴したと言い、2007年には小栗旬の主演で上演を実現させ、大きな評判を呼んだのが記憶に新しい。

稽古場に入ると、終幕の芝居が始まった。貴族たちの演技に対し、「テニスの選手がレシーブを待つみたいな体勢で」「そこで空を見ると芝居くさくなるぞ!」「裾さばきが格好悪い」「向こう側から観るお客さんも意識して」などと矢継ぎ早に指摘が飛ぶが、稽古の進展は一瞬たりとも停滞しない。演出家は正解ではなくヒントを示すことで俳優の想像力を喚起し、俳優は主体的に動きつつ、全体の画づくりを客観的に意識しているのが、見てわかる。

カリギュラを演じる内田健司が登場したのは、しばらく経ってからだった。華奢な肉体が役には意外で、ならば、その内側からギャップのある圧倒的なパワーがあふれ出すのかと思えば、それともまた違う。語りかけるように柔らかな口調だが、言葉の一つひとつに伝えたいという思いがあふれている。「ろくに飯食わないエンピツみたいな体だけど(笑)、彼のカリギュラには情緒がある」と蜷川の評価も高いが、内田はこれまでの公演で大きな役を演じたことはなかった。「こういう才能が隠れていたんだね。気づいて良かったよ」。

小久保寿人、松田慎也、川口覚ら公演ごとに新しい才能が台頭し、集団としての厚みが増してきた。昨年11月の第4期生オーディションで14人が加わり、現在メンバーは36人。役者が揃うことで、互いが互いを刺激し、さらに力をつける。だから、さいたまネクスト・シアターは常に、最新作が一番すばらしい。

彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター(大ホール内)にて2月15日(土)から27日(木)まで上演。チケット発売中。