山田洋次監督と黒木華 (C)JEAN-LOUIS TORNATO

山田洋次監督の82作目となる新作『小さいおうち』が第64回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、このほど記者会見とプレミア上映が行われた。現地には山田監督と女優の黒木華、松竹の深澤宏プロデューサーが参加した。

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本作は、中島京子の直木賞受賞小説を映画化したもので、60年前に東京郊外に建つ赤い屋根の“小さいおうち”で女中として働いていたタキが見た“秘められた愛”に隠された秘密を、当時のドラマと現代のドラマを織り交ぜて描く。黒木のほかに、松たか子、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子らが出演している。

会見で山田監督は「この物語では、1935年~45年までの約10年間が描かれていますが、日本では、当時の戦争中のことを知っている人が少なくなってきています。僕は戦争中の日本の市民生活を知っている最後の世代だと思います。だからどうしてもこれを今の観客に見せたい。あの時代の日本人がどんな風に暮らしていたか、そして、どんな風にしてこの日本という国が戦争に進んでいき、最終的に不幸な結果になってしまったのかということを、今の観客に伝えられればいいなと、そんな風に思いました」と述べ、黒木は劇中で描かれる時代の所作について質問され「当時の動きはその時代の映画などを観て勉強しました。また監督もたくさんいろいろなことを教えてくださいました。着物を直す仕草とか、すごく細かく教えてくださったし、演じていて楽しかったです」と回答した。

会見後には映画祭のメイン会場のベルリナーレ・パラストでレッド・カーペットとプレミア上映が行われ、1600席の会場は満席に。上映後に山田監督は「去年のベルリン映画祭で『東京家族』という作品がベルリナーレ・スペシャルとして上映されました。そのとき私は出席できませんでしたが、“この次の映画が上映されるときには、僕も行けることを願っています”というメッセージを送りました。その願いがかなっただけでも、十分です」とコメントし、集まった観客から大きな拍手を集めた。

『小さいおうち』
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