『スノーピアサー』で脳天からガツンとくる映画体験

2014.2.17 16:3配信
『スノーピアサー』(C)2013 SNOWPIERCER LTD.CO. ALL RIGHTS RESERVED

『殺人の追憶』のラストで、ソン・ガンホが演じる刑事は、覗き込んだ排水溝の奥に何を目にしたのか……。見つめる先を確かめたい欲求に心をかき乱されたわれわれ観客は、同じポン・ジュノ監督のこの『スノーピアサー』で、次々と目の前に迫ってくる“その先の光景”の鮮烈なビジュアルに圧倒され続ける。とにかく“見せて”驚かせる。自らの作風をアップデートさせる監督の強い意志に呆然とするしかない。もちろん監督のファンでなくとも、本作はシンプルに楽しめるだろう。

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ストーリーは単純明快(このあたりも過去の彼の作品と印象が違う)。列車の後部車両で悲惨な生活を強いられてきた主人公たちが、一同決起し、前部車両に突進していく。近未来の格差社会で起こる革命が、1本の長い車両での“前進”によって展開するので、見た目にもひじょうに分かりやすい。ドアを開けるたびに出てくるユニークな車両風景で、テーマパークのアトラクションに乗っているような感覚も与えてくれる。革命団の、前へ、前へという方向性が映画自体の強力な推進力にもなった。

そんなアトラクションに乗っていた観客は、要所で激しい一撃も喰らい、そこにポン・ジュノの本領が発揮される。近未来が舞台ながら、斧や棍棒という原始的な武器を多用したバトルは確実に生々しい痛みを伝えるし、ティルダ・スウィントンの“超・上から目線”総理に代表されるキャラクターのアクの強さは、トラウマになるレベル。ティルダは『グエムル/漢江〈ハンガン〉の怪物』に惚れ込んだことが出演のきっかけであり、ポン・ジュノ作品でなかったら、ここまで俳優と役の過剰な化学反応は実現しなかったかも。

極めつけはクライマックスだ。『殺人の追憶』の刑事や、怪物グエムル、『母なる証明』の母のように、強い動機に突き動かされ、ひたすら前に進んだ主人公たちは、最後の最後に、前進に疑問を投げかける。はたして前に進むだけでいいのか? その疑問は、われわれ全人類への警鐘でもある。アトラクションとして存分に楽しんでいたら、脳天からガツンとやられ、骨太なテーマに引きずりこまれた感じ。でも、この感覚こそ、最高の映画体験じゃないか!?

『スノーピアサー』
公開中

文:斉藤博昭

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