新会社PinTの狙いは?(写真は左からパネイルの名越達彦社長、PinTの田中将人社長、東電EPの田中正常務)

電力自由化から2年、ガス自由化から1年。資源エネルギー庁が登録している事業者は双方ともに数百に上っているが、顧客の選択基準は価格一辺倒になっているのが現状だ。今回、東京電力エナジーパートナー(東電EP)とパネイルの共同出資で立ち上がる新会社PinTは、価格以外の電力・ガス販売の価値を生みだし、こうした状況の打開を目指す。

PinTはパネイルのグループ企業である「せとうち電力」の商号を変更。東電EPが60%、パネイルが40%を出資し、4月2日に合弁会社として設立した。社名の由来は名前の通り「ピントを合わせる」という意味が込められている。合わせるのは、価格以外の顧客のニーズだ。社長に就任する田中将人氏は「電気・ガス販売のコト化」と言い表した。

東電EPと提携するパネイルは、クラウド型電力小売基幹システム「パネイルクラウド」を展開するベンチャー企業。これまで手作業が主流だった電力販売の手法をクラウド上で一気通貫して行えるようにし、電力小売市場のIT化を促進させた立役者だ。

電力・ガスの販売が主力のビジネスとなるが、重点を置いているのは+αの価値創出だ。“Utility 3.0”をキーワードに、エネルギーだけでなく、不動産、保険、金融、自動車、流通、カードなどあらゆる業種と連携した複合サービスを模索する。

第一弾として発表したのは、不動産管理会社向けサービス「PinT with 賃貸」と個人向けサービス「PinTでんき」。「PinT with 賃貸」は入退去時の電気契約の切り替えや複数の建物の電気料金を一括支払いができるサービスで、5月1日から提供予定。田中社長は「ホテルの部屋をチェックアウトするように賃貸で発生する手間を簡略化できる」と導入によるメリットを説明する。

「PinTでんき」は電気料金の総額に応じた割引を適用する料金プランで、沖縄県を除く全国で6月1日から順次提供予定。こちらは東京電力のサブブランドという扱いになる。このほか、蓄電池なしで余剰電気を預けられる「PinT with 太陽光」も導入に向けて実証実験を進めている。

電気・ガスを切り口に複数のサービスを一体化させるビジョンは、すでに通信事業者を中心に提示されているが、結局は値引きが最大の売りになっている。「PinT with 賃貸」のように、システムそのものを見直すことで実現するサービスは、まさに価格以外の価値となる。PinTの模索は他の事業者にとっても新たな方向性を示すヒントになりそうだ。(BCN・大蔵 大輔)

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