(左から)松山ケンイチ、久保田直監督

まもなく公開となる映画『家路』の完成披露プレミア上映会が20日に都内で行われ、主演の松山ケンイチ、久保田直監督らが舞台あいさつに登壇した。

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震災後、東京からひとり、故郷へと戻り、立ち入り禁止区域内の自宅で自給自足の生活をする次郎と、妻子、母と共に仮設住宅で暮らし、田畑を失った苦しみを抱える兄・総一を軸に、福島の現実を通して家族や故郷への思いを描き出していく。

福島出身ということで、松山は劇中で現地の方言を喋っている。同じ東北出身とはいえ当然、地域が異なれば方言も違い「福島の独特の方言を勉強しました」と明かす。また次郎は実家で田んぼを耕し、米作りを行なうため、現地の農家の方から農業指導を受けており、この経験が役作りでも大きな意味を持ったようだ。

また、指導に当たった秋元美誉氏の存在に触れ「(劇中の)沢田家の実家の撮影も秋元さんの家を使わせてもらい、仲良くさせていただきました。ご家族がご飯を作ってくださったりして、なかなかない経験で和気あいあいとした現場になりました」と充実した表情で振り返った。久保田監督はこれまでドキュメンタリーの分野で作品を作ってきて長編劇映画を手がけるのは今回が初めて。「企画の開始から3年かかりましたが、感無量です」と感慨深げ。主演を張った松山について、今年54歳を迎える監督は「ケンイチは本当に大人。話していると同級生か、先輩と話しているよう(笑)」と語り、演技に関しても「全くブレない。こうと決めたら外れない」と称えた。

久保田監督は、本作が出品されたベルリン国際映画祭に参加し、現地での上映と観客との質疑応答に出席したが「4回の上映は満席で、夜中の1時に終わってその後にQ&Aをやった回もあった。映画祭の人からは『この作品が一番、拍手が大きくて長い』と言われました」とうれしそうに語った。観客の評価以外にもベルリンではうれしいサプライズがあったようで、久保田監督は現地で、ある女性に突然、話しかけられ「いきなり『香港で公開すると決めました』と言われてビックリしました」と告白。実はその女性は香港における配給に大きな影響力を持つ人物で関係者によると「その人がそう言ったならほぼ決定」とのこと。「香港公開が決定しました!」と高らかと宣言し、客席からは祝福の拍手がわき起こった。

残念ながらベルリンへは行けなかった松山も「気持ちは行ってました。(現地の反応は)僕もうれしいです」とニッコリ。最後にこれから映画を観る観客に向け「ものすごく前向きな映画です。観れば分かります」とシンプルながら力のこもったコメントを残し、再び会場は温かい拍手に包まれた。

『家路』
3月1日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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