「撮る」へのこだわりが新たな市場をつくる――CP+ 2014にみるカメラ世界市場のトレンド

2014.2.24 20:39配信
キーノートスピーチで世界のカメラ市場の縮小を報告するCIPAの内田恒二代表理事会長

2月13~16日、パシフィコ横浜で開かれていた日本最大のカメラの見本市「CP+ 2014」。関東地方に降った大雪の影響で、多くの来場者が見込まれていた土曜日(15日)の開催は中止を余儀なくされたが、それ以外の日は、日本から発信する新たなカメラのトレンドを発見しようと訪れた来場者の熱気で溢れていた。

●世界規模で急速に縮小するデジタルカメラ市場

CP+では、メーカー各社の展示とともに、カメラ関連のセミナーや市場動向の報告などのプレゼンテーションが多数行われた。このなかで、多くのプレゼンターが語っていたのは、スマートフォンの台頭とカメラ市場の縮小だ。主催団体のCIPA(カメラ映像機器工業会)の内田恒二代表理事会長は、キーノートスピーチで、2013年の全世界のデジタルカメラ出荷台数について、前年比約36%減の約6300万台だったと報告。11年から3年連続で前年割れしているうえに、縮小率も拡大しつつある実態を明らかにした。そしてこの大幅な減少を「スマートフォンの普及によるもの」として、主に「エントリモデルが大きな影響を受けている」と語った。さらにCIPAは、14年の出荷見込みはさらに20%程度減少する見通しを発表している。

アメリカの調査会社、インフォトレンズのエド・リー氏の講演「写真はどこに行くのか?~インフォトレンズが定義する新しいカメラ市場~」では、「カメラ市場には変化が訪れている」として、高画質でありながらネット環境で写真を共有する「インテリジェント・フォトグラフィー」の時代が到来すると予測。カメラメーカーは、単なるハードの販売だけでなく、写真を利用する際の消費者のアドバイザーの役割を果たさなければならないと語った。そのほかの講演でも、カメラの「コネクティビティ(他機器とのつながり)が重要」として、カメラがよりスマートフォン化していくとの予測も目立った。

しかし、世界のカメラ市場をけん引する日本の市場をみると、方向はやや異なるように思える。コンパクトカメラ市場が急速に縮小している状況は同じだが、センササイズが1/1.7インチ以上のいわゆる高級コンパクトカメラは、販売台数の前年同月比で70%増の水準で拡大。レンズ交換型(一眼レフ/ミラーレス)の販売も、前年比で毎月2ケタの伸びを維持している。いずれもカメラの本質的な価値をさらに追求する動きで、スマートフォンのいい点は取り入れつつ、本質的にはまったく別の方向を向きながら新たな道を模索しているのが現状だ。

●カメラの可能性を広げる製品が続々登場

では、CP+ 2014の展示から、これからのカメラ市場を占ううえで特に注目すべき製品を紹介しよう。

ひときわ目立っていたのはシグマブース。開催直前の2月10日に発表したコンパクトデジタルカメラ「SIGMA dp Quattro」に触れようと、開場直後から長い行列ができた。横に長いボディと大きなレンズは、現在のコンパクトカメラを見慣れた目には異様に映る。シグマによると、3900万画素相当と極めて画素数が多い独自のセンサを採用し、高画質にこだわったために、わずかな手ブレも写真に影響してしまう。そこで「しっかりホールディングでき、ブレにくい形状を追求した結果、この形に行きついた」という。あくまでも本質的な写真のクオリティを追求したことが、形状まで変えてしまったのだ。ここには、スマートフォンと競合する要素はまったくない。

また、今年1月に米ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)でキヤノンが発表した「PowerShot N100」も、まったく新しいアイデアをカメラ市場に吹き込む製品といえる。新たなコンセプトを提案する「N」シリーズの2作目で、被写体と一緒に撮影者も映してしまおうというアイディアが秀逸だ。撮った後のことをあれこれと気にするのではなく、いかにその場をトータルな記録として写真に残すかにこだわった製品だ。形状は異なるが、コンセプトはリコーが昨年発売した撮影者も含めて360°が一度に撮影できる「THATA(シータ)」に似ている。これらは、撮影する写真そのものがとてもユニークだ。

銃に取りつけて狙いを定めるドットサイト(照準器)を内蔵したカメラも登場した。オリンパスの「STYLUS SP-100EE」だ。「EE」はイーグル・アイの略で、鷹タカの眼のことだ。35mmカメラ換算で最大1200mmの50倍ズームレンズを備え、野鳥の撮影などに威力を発揮する。こうした超望遠レンズを使った撮影では、倍率があまりにも高すぎるために、鳥のようによく動く被写体をファインダーで追いかけるのは非常に難しい。そこで、ドットサイトのハーフミラーに映る点を被写体に重ね合わせながら撮影すれば、常に全体が見えているので、被写体を追いやすくなるわけだ。これも、撮るという行為、つまり撮影する写真にこだわったカメラにほかならない。

用品でも、撮影にこだわった製品が目立った。地味だが興味深かったのは、スリックの「スリックマウント」。三脚の脚の部分と、カメラを載せる雲台部分を簡単に着脱できるマウントだ。通常は雲台を三脚にねじ込んでつなぐのだが、「スリックマウント」はワンタッチでしっかり着脱できるので、三脚を持ち運ぶときなどに便利だ。

また、香港に本社を置く空撮用小型ヘリコプターのDJIがCP+に初出展し、来場者の目を引いていた。GoProなどのアクションカムを搭載すれば、手軽に安定した空撮が楽しめるという「PHANTOM」は、有人ヘリからの撮影と同等の映像がラジコンヘリで撮影できるとあって、マニアの間で静かなブームを呼んでいる。さらに安定した撮影を実現する「PHANTOM2」などを出品していた。

●スマートフォンとの競合を「チャンス!」と捉えた製品展開に期待

CP+で各メーカーが大事にしていたのは、やはり「いい写真を撮る」ための、本質的な機能へのこだわりだった。撮った後、共有するための処理は、スマートフォンが便利かもしれない。しかし、そもそもいい写真が撮れなけば、共有する意味も価値も乏しくなる。そして、いい写真は、やはりそう簡単には撮れないものだ。撮った後の処理よりも、撮るその瞬間の重要性ははるかに大きい。カメラの価値は、「いかに思い通りの写真が得られるか」にかかっている。そうした本質部分の機能を磨いていくことこそ、カメラ市場を発展させる原動力だと、改めて感じた。

スマートフォンの台頭で、日常的に写真を撮って楽しむ人々の数と、一人あたりの撮影枚数、いわゆるショット数は確実に増えている。どんなかたちであれ、写真を楽しむ人々のすそ野は大きく広がっているわけだ。今年9月にドイツ・ケルンで開く世界最大の写真見本市「フォトキナ」を主催するケルンメッセ GmbH のカタリーナ・C・ハマーCOOは、こうした状況について、「いままでカメラを使っていなかったような人たちも、写真を撮るようになってきた。写真業界にとってはチャンスが広がっているではないか」と語る。どんな製品やサービスでこのチャンスを生かしていくのか。メーカーの腕のみせどころだ。(道越一郎)

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