幻想的な美術。喪失と再生を描くオペラ「死の都」

2014.3.11 19:12配信
新国立劇場オペラ「死の都」ゲネプロ(2014年3月)撮影:三枝近志 新国立劇場オペラ「死の都」ゲネプロ(2014年3月)撮影:三枝近志

3月12日(水)に開幕を控える新国立劇場オペラ「死の都」(コルンゴルト作曲)の公開稽古が、同9日に行われた。

新国立劇場オペラ「死の都」の公演情報

モーツァルトと並び称されるほど幼少期より神童ぶりを発揮し、後期ロマン派を代表する作曲家として活躍するも、ナチスのユダヤ人迫害から逃れるためアメリカに亡命し、後年はハリウッド映画音楽の黄金期を支えたエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト。彼が弱冠23歳のときに手がけたオペラが「死の都」だ。同時代のマーラー、R.シュトラウス、プッチーニから色濃く影響を受けた甘美な旋律と豊潤なオーケストレーション。ベルギーの古都ブルージュを舞台に、愛妻を亡くした主人公パウルが妻マリーと瓜ふたつの女性マリエッタと出会い、倒錯のひと時を過ごす物語を幻想的に描いていく、後期ロマン派オペラの白眉のひとつだ。

今回上演されるのは、2010年にフィランド国立歌劇場(ヘルシンキ)で上演されたプロダクション。美術は、ロンドン五輪の閉会式や、レディ・ガガ、カニエ・ウェストらのコンサートも手がけるエス・デヴリンが担当。小道具など細部を凝らした美しく幻想的な舞台美術が各誌で大絶賛を博している。

第二次大戦以降、クラシック音楽界では忘れ去られた存在となるも、近年再評価が高まるコルンゴルト。その作品の中でも代表作といえるのが「死の都」。世界各地のオペラハウスで上演機会が増えているが、その際にネックになるのが、主要歌手陣に求められる歌唱力の難度の高さだ。2時間以上に出ずっぱりなうえに高音を要求され、ワーグナー作品の英雄役以上の難役ともいわれるパウルを演じるは、今回の舞台で同役を演じるのが100回目となる強者トルステン・ケール。軽やかな歌と踊りをこなさなければならないマリエッタ役には2013年1月の新国立劇場「タンホイザー」でも好演を披露した若きソプラノ、ミーガン・ミラーが登場。舞台稽古では共に熱のこもった充実の歌唱で、緊迫感を増していくドラマを牽引し、本公演への期待を高めてくれた。

主人公パウルの精神世界が基本となる物語において要となるのが演出。英国ロイヤル・オペラ芸術監督をはじめオペラシーンで活躍するカスパー・ホルテンは、亡くなった妻マリーを舞台上に登場させるというアプローチを採用。パウルにしか見えないマリーを観客へ視覚化することで、徐々に深まるパウルの精神の倒錯と、破綻していく周囲との関係を生々しく描いていく。妻マリーとマリエッタとの間で、精神の均衡を失っていくパウル。ついにはマリエッタをその手にかけて、絶望の中で妻マリーの死を受け入れた彼がその先に見るものとは。観るものの心に染み渡り、胸を打たずにはいられないラストは見ものだ。

新国立劇場オペラ「死の都」は、3月12日(水)から24日(月)まで同劇場オペラパレスで上演(全5回)。

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