『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』 (C)2013 All Is Lost LLC

ロバート・レッドフォードが主演を務める映画『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』が間もなく公開される。ヨットでインド洋を単独航行中に漂流し、広大な海に取り残されてしまった男を演じたレッドフォードは、主人公と同じように海に投げ出され「即興で学びながら」撮影に臨んだという。

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本作の物語はインド洋を航行中の男のヨットにコンテナが激突し、船体に穴が開いたことから始まる。無線も、航行機器も故障し、浸水は止まらず、男はヨットを捨ててボートに移る。大自然の脅威にさらされた男はタイトル通り“すべて”を失い、海の真ん中で自分自身と向き合う。映画は全編に渡ってレッドフォードのみが出演し、彼はセリフをほとんど発さずに男の感情を表現した。

俳優として数々の名作に出演してきたレッドフォードは今も多くの映画ファンにとって憧れの存在だ。しかし彼は「主人公が超人的なキャラクターとして描かれていない点」に魅了されたという。「最近の映画はスーパーヒーローだらけで、それはビジネスとしてはいいんだろうけれど、僕はあまり関心がない。この映画の主人公は天才的な船乗りというわけではないから、事態が悪化して、未経験の事態に陥ると、即興で対処しなくてはならないんだ。これはとてもリアルなシチュエーションだし、共感出来る。僕は船乗りじゃないから、この映画を通じて学んでいかなくてはならなかった。その意味において、このキャラクターと僕の経験はとても似ていたんだ」。

さらに彼はその過程を“セリフ”を使わずに表現しなければならなかった。「この映画は無声映画のようで、それが気に入ったんだ。言葉の壁がないから、観客と直接交流できるようになる。セリフに妨害されることになしにね。映画の世界に入り込んで、自分で解釈することができるようになるんだ」。

劇中で主人公は極限の状態まで追いつめられる。しかし、彼は生きることをやめない。レッドフォードは、ロッキー山で苦しみながら戦い続ける男を演じた主演作『大いなる勇者』と本作には共通点があると分析する。「いずれの物語でも、主人公がもうこれ以上続けるのは不可能だと感じるときがくる。この時点になると、多くの人は足を止めて、諦める。でも一方で、努力を続ける人がいる。この点に僕は強く惹かれる。旅の途中で、続けることに意味が見いだせなくなっても、僕は続ける。それしか自分には残されていないから。僕自身はそう考えるタイプだし、いずれの映画の主人公も同じ行動を取るんだ」。

すべてを失ってもなお、生き続けようとした男は最後に何を語るのか? 主人公と二人三脚で過酷な旅を続けたレッドフォードが見せる“表情”に注目してほしい。

『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』
3月14(金) TOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開