日本のeスポーツ業界について語る社会学者の加藤裕康氏

デジタルエンターティメント研究会は4月24日、東京・渋谷にある専門学校東京ネットウエイブのガオ君シアターでトークイベント「日本型e スポーツの過去・現在・未来」を開催した。発表のなかには、コンピュータゲームを用いた競技「eスポーツ」の起源についても言及していた。

加藤氏の調査では、文献に残っている最古の全国規模のゲーム大会は、1974年に日本で開催された「セガTVゲーム機全国コンテスト東京決勝大会」だという。このコンテストでは、全国のゲームセンターでゲームを使った大会を開き、勝ち上がった出場者たちが東京に集まって決勝戦を実施する、という方式をとっていた。「ゲームそのものを売るというよりも、ゲームを通して得られる体験を売るというシーンの起源として、この大会があげられる」(加藤氏)。

一方、eスポーツに欠かせないゲームをプレイし賞金を得る“プロゲーマー”の起源は、1997年にアメリカで設立した「サイバーアスリート・プロフェッショナル・リーグ(CPL)」だという。翌年に賞金制の大会を開催し、プロ化の流れが本格的になった。

2000年には韓国がeスポーツ協会(KeSPA)を立ち上げプロゲーマー登録制度を敷き、翌年に世界最大規模のeスポーツ大会「ワールド・サイバー・ゲームズ」を開催した。これらの動きから、世界でプロゲーマーが認知され始め、社会的な地位を築いていった。

日本でも同時期にプロゲーマーが誕生していたものの、活動が長続きせず、世間では知られていなかった。話題にあがるようになったのは、世界的に有名な格闘ゲーマーの梅原大悟氏が日本初のプロ格闘ゲーマーになってからだ。その後は、プロゲーマーがメディアに取り上げられる機会も増え、認知度を上げていった。

18年には、日本のeスポーツ関連団体が集結し、「日本eスポーツ連合(JeSU)」が設立。賞金問題を回避するためのプロライセンスの発行やeスポーツプレイヤーの支援を始めた。このほか、吉本興業やJリーグがeスポーツ事業参入するなど、経済的にも注目度が高まっている。ゲームがスポーツとして日本社会に受け入れられる日は、遠くないかもしれない。