(左から)蒼井優、松山ケンイチ

名カメラマンとして数々の作品を手掛ける木村大作の監督2作目『春を背負って』が完成し、13日、都内で木村監督をはじめ、松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司、檀ふみ、新井浩文が報告会見を行った。

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初メガホン作『劔岳 点の記』が絶賛を浴びた木村監督が、再び山岳映画に挑み、標高3000メートルの立山連峰でのロケを敢行した本作。撮影に1年を費やし「四季を撮るため」とCGに頼らない自然美に自信を示し、「演出は何もしていない。“本当”の場所に俳優さんを連れて行き、演技をしてもらう。それが最大の演出。自然を前にすると人としての素や佇まいは隠せない」と熱弁した。

笹本稜平氏の同名小説を原作に、都会で暮らしていた主人公・亨が亡き父の山小屋を受け継ぎ、自然の厳しさと美しさに触れながら生きる力を取り戻していく。主演の松山は「寒いけど、汗が止まらず、ひざがガクガクすることも。高山病になりかけた」と高地での過酷な撮影を振り返り、「自然の中だからこそ、説得力ある亨でいられた。映画には、自分でも見たことない表情がたくさんありました」と誇らしげだった。

松山にとって、木村監督とは初タッグで「豪快な方ですけど、とても無垢で純粋に映画のことを考えている。まっすぐな人間性の前では、うそをつけないし、小手先の演技は通用しない」と感想を語った。

山小屋で働くヒロインを演じる蒼井は「監督の“今まで”と“今”が凝縮された作品で、その一部になれたのは幸せ。私にとっては恐れ多い存在の木村監督に撮ってもらえるチャンスを断る理由はなかった」と感無量の面持ち。現場では“優(まさる)”のあだ名がついたといい、「男みたいだったから。山頂でもケロっとしていて、ずっとニコニコしていた」(松山)。木村監督も「一番山に強かったのは、蒼井優さん。いつも笑顔ではしゃいでいたし、文句一つ言わずに撮影を楽しんでいた」とお墨付けを与えていた。

『春を背負って』
6月14日(土)全国東宝系ロードショー

取材・文・写真:内田 涼