映画『ワン チャンス』を手がけたデヴィッド・フランケル監督とポール・ポッツ

携帯販売員から一夜にしてオペラ歌手となったポール・ポッツ実話を描いた映画『ワン チャンス』が間もなく公開になる前に、デヴィッド・フランケル監督と、映画のモデルになったポッツ本人に話を聞いた。

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本作は、田舎町で携帯販売をしながら暮していたポッツが、周囲の人々に支えられながら、自分の夢である“オペラ歌手”になるため、勇気をふりしぼって最後にして1回きりのチャンスであるオーディションに挑む姿を描いた感動作。ちなみに劇中で披露される楽曲は、ポッツ本人が吹き替えたものだ。

何者でもない男が、愛する女性の支えと不屈の精神によってチャンスを掴む。本作と米映画の傑作『ロッキー』に類似性を見出しているフランケル監督は「あの映画の“夢を決して諦めてはならない”という部分がこの映画を描く際に大きなインスピレーションを与えてくれた」と振り返る。

本作は、“成功者のドラマ”を描くのではなく、成功を信じて突き進む“ヒーローの精神”を描いている。フランケル監督は「この映画は最近、増えているヒーロー映画の“オリジン(起源)”を描いた作品に似ているかもしれないな。主人公は自分の真の力に気づいていないし、周囲も知らないんだ。ポールから携帯電話を買った客は、クラーク・ケントがスーパーマンだと知らない人たちと同じなんだ(笑)。まさか彼が国際的なオペラ歌手になる能力を秘めていたなんて想像もしなかっただろうからね」と力説し、ポッツは「この話を妻に聞かれたらきっと爆笑されてしまうでしょう。『あなた、マントはどこなの?』って」と照れる。

ポッツの物語を語る際、妻のジュルズの存在はなくてはならないものだ。ポッツが自信を失くし、トラブルに巻き込まれ、歌の道を捨てようかと迷ったときも、ジュルズは夫を励まし、背中を押す。映画『ロッキー』で主人公はチャンピオンにはなれなかったが、栄光と愛する人を手に入れた。この映画もまた、オーディションに合格することが“ハッピーエンド”ではなく、もっと深い人間ドラマが描かれる。フランケル監督は「この物語はポールを主人公にしているけど、彼とジュルズさんのラブストーリーでもあるんだ。ポールがタフな審査員の前で歌った場面は、ジュルズさんの信じる心や想いが証明された瞬間でもある。そんな側面もきっと観客の心に響くと思うよ」と笑顔を見せ、ポッツは「この映画を観た方がどう思ってくださるかはわかりませんが、私としてはこの映画を観て、夢を追い続けること、夢を諦めないことの大切さを知っていただければと思います」とメッセージをおくった。

『ワン チャンス』
3月21日(金・祝) TOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー