『それでも夜は明ける』

第86回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演女優賞に輝いた映画『それでも夜は明ける』が日本でも公開されている。本作は、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピットら豪華キャストが出演しているが、観賞後には主人公を演じたキウェテル・イジョフォーの演技力の高さに驚かされるはずだ。彼は本作を通じて主人公の旅を共に“経験”してほしい、という。

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本作は、ニューヨークで妻と子どもと共に幸福に暮していたソロモン・ノーサップが、ふたりの白人の裏切りによって拉致され、12年もの間、“奴隷”として苦しむも、生きる希望、家族と再会したいという望みを捨てずに懸命に生き抜こうとする姿を描いた作品。イジョフォーは英国出身の実力派俳優で、英国演劇界で最も権威があるローレンス・オリヴィエ賞も受賞している。

観客はイジョフォーが演じるソロモンの目を通して、奴隷制度の真実を見つめ、彼の苦しむ表情を見ることで痛みを感じる。本作を手がけたスティーヴ・マックイーン監督は「彼はこの映画を背負わないといけなかったんだ。彼は彼の魂でこの映画を背負っているんだ。それはとても難しいことだった」と振り返り、イジョフォーも「この役を引き受けるのは大きな責任を伴う。僕は怖気づいたし、不安だった」と語る。

しかし、彼は「この物語を語らねばならないと思った」と出演を決め、過酷な撮影に挑むことになった。「スティーヴは最も複雑なプロセスに望んで関わり、それをきちんとやろうとする監督だ。撮影では長いテイクや、とても難しいシークエンスや、人々が自然に緊張するようなことがある。すると、人はその難しい部分をサッと通り抜けるためにフィルムをカットしてつなごうとするんだ。でも彼はまず一番難しいことをやる。そのシーンを、一日使ってでも、何度も繰り返してワイドショットで撮ることだ。どんな瞬間もキャラクターを理解し、その中に入り込まねばならないんだ」。

イジョフォーがソロモンに入り込んだように、観客もまた彼を通じてソロモンの心の中に入り込み、過酷な12年間を体験する。「僕が映画を作っていた時に経験したこと、そして僕が脚本やこの自叙伝を読んだ時に経験したことを、観客に感じてもらいたい。僕は人間の精神の深さに圧倒された。この物語はそういうことを多く語っている。世界史の中で作られた最も過酷な仕組みのひとつについて語る物語だ。そして心を損なわれることなく生き残ろうとする人間の物語だ。そしてやり遂げる。それは目撃しても、参加しても、ものすごい経験だと思う」。

『それでも夜は明ける』
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