「それは特にないですね。韓国映画とはいえ、日本人が観て嘘だと思って欲しくなかったので、日本人の感性ではありえないところは変えていったんです。だからむしろ、大袈裟な言い方になってしまうかもしれませんが、僕が長谷川辰雄という人物に影響されたというよりも、影響を与えたと言えるかもしれません。監督が色々なことを受け止めて下さる方だったので、話し合いをしながらたくさんのシーンが生まれました。"韓国映画のなかの日本人"だったからこそ、ディスカッションに時間をかけざるを得ない現場でしたね」

 共演したチャン・ドンゴンはスター然としたところのない、「謙虚で真面目で人間としても役者としても尊敬できる人」。オダギリにとって今作は、『悲夢』『PLASTIC CITY プラスティック・シティ』『ウォーリアー&ウルフ』などに続く、アジアの才能とのコラボレーションとなる。国境と言葉を超えていくいくつかの経験は、彼のなかに変化をもたらした。

「監督は日本語がわからないので、僕の芝居をジャッジするのは言葉ではなくて感情の面なんです。以前ブラジルで撮影したときにも、向こうの人たちは僕に対する先入観がないから、芝居で勝負するしかない。日本だとどうしても甘やかされるし、自分も甘えてしまう部分があるじゃないですか。でも海外だと頼れるのが芝居だけという意味で、すごくシンプルなんですよね。達成感も得られるし、自分が育った日本映画界の価値観がまったく通用しないから、毎回すごくいい勉強になります。これからもお誘いがあれば、ハリウッドのメジャーな作品じゃなければ(笑)挑戦したいと思っています。海外の作品は苦しいことしかないので、自分に対する戒めに近いのですが、やりがいを感じるんですよね」

 役作りのためにはじめたマラソンを続けていることに触れると、またもや「自分に対する戒めですね」という返答が返ってくる。

 「マラソンっていいなと思ったわけではなくて、その真逆で、苦しくて苦しくてしょうがないんですよ。でもちゃんと戒めないと社会に対して申し訳ない気がして、自分に罰を与えるという意味でやっているだけなんです。マラソンって、明確に肉体的にも精神的にも罰を与えられるんですよね」

 "戒め"という強い響きを持つ言葉を、オダギリは涼しい顔で口にする。

 「自分にも他人にも厳しくしないと」とさらりと語りながら掴んだ何かを、彼はこれからもきっと、スクリーンに刻み続けていくのだろう。 

 (『MOVIEぴあ 2012冬号』より)

マイウェイ 12,000キロの真実(ぴあ映画生活)
2012年1月14日(土)公開

 

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プロフィール

オダギリジョー Odagiri Joe
1976年、岡山県生まれ。
'03年にカンヌ国際映画祭に正式出品された『アカルイミライ』で脚光を浴びる。
血と骨』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。
そのほかの主な出演作に『ゆれる』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』などがある。

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ほそや・みか  情報誌の編集者を経て映画ライターに。「FRaU」「In Red」「marisol」などの女性誌を中心に、ハリウッドからアジア、日本まで幅広く映画紹介や俳優、監督のインタビューなどを担当している。好きなジャンルはラブコメディと青春映画。