知的欲求に対して、素直で貪欲なところは似ている

撮影/河井彩美

――物語の舞台は1980年代となります。そのために意識したことはありますか。

言葉遣いは気を付けました。今どきの人の話し方にならないように。あと、髪型はちょっと全体的にボリュームがあって、前髪は流すのではなくぱっつん気味でちょっと巻いて。当時、流行っていた髪型なんですけど、「江南のキャラとも合っているな」と思いました。

――江南の部屋中にも80年代ならではのアイテムがありますね。

(ダイヤル式の固定)電話は持ってみたらすごく重かったです。受話器を置いたときの“ガチャン”という音が、聴いたことないはずなのに、なぜか懐かしい感じがありました。

それから、部屋に置いてあるものから江南がどんな人なのかを想像できる部分もあって。大学生の一人暮らしなのにテレビが置いてあったり、家具もしっかりしていたり、「意外と裕福な家の子なんだろうな」とか。

新聞のスクラップや、棚にも本がたくさんあって。僕が普段は絶対に読まないジャンルの本もあったので、脚本を読んだ時点では、自分と江南は似ているところがあると思っていたんですけど、かけ離れているのかもと思ったり。

マネキンとか、人体模型もあって、それに帽子をかぶせて使っていたり。なかなか変態チックな趣味をしてるなと(笑)。「僕が思っていたよりも江南は奇人かも」とか、部屋から感じることも多かったです。

撮影/河井彩美

――ご自身と「似てる」と感じた部分は、どういうところですか。

根が子どもっぽいというか。一度気になったことをとことん突き止めようとするところは、僕にもあるなと。江南は最初に受け取った手紙が気になって、そこからどんどん事件に夢中になっていきますけど、僕も一度気になることがあると、それについてずっと考えたり、調べたりしてしまうので。知的欲求に対して、素直で貪欲なところは似ているなと思います。

――ただ、江南は周りのキャラクターと比べると、わりと常識的で普通の人でもありますよね。

ミステリ研究会の中でも、主役感はなくて、脇役と言うか、名だたるミステリー作家に憧れてはいるけど、ホームズにはなれない(助手の)ワトスンタイプですね。自分でもそれを自覚しているようなセリフもありましたけど。

僕は江南がミステリ研究会を辞めたのも、「自分はホームズのようにはなれない」というコンプレックスが原因の一つにあるのかな?とも思っていました。そういうところからも、江南のキャラクター像を拾っていきました。