『リベンジ・マッチ』 (C)2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

「悪い冗談か!」と突っ込んだ人たち。お気持ち分かります。御年67歳のシルベスター・スタローンと70歳のロバート・デ・ニーロが老体に鞭打ってボクシングのリングで対決するなんて!

その他の写真

スタローンの『ロッキー』とデ・ニーロの『レイジング・ブル』といえば、ともにボクシング映画史に残る最高傑作である。それがなぜ「昔の名前で出ています」みたいなこんな企画を受けたのか?そう首を傾げるのは映画ファンとして当然の反応。「伝説vs伝説のドリームマッチ」といえば聞こえはいいが、ヘタすれば過去の偉業に泥だって塗りかねない。

しかしながらそんなことは当人が誰よりも分かっていたはずで、外野の杞憂なんてどこ吹く風。スタローン扮するヘンリーもデ・ニーロが演じるビリーも、年寄りの冷水だと百も承知の上で、積年の因縁がある元ライバルと戦うためにリングに上がる。なぜなら70歳になってもたぎる炎があれば、消す必要なんてどこにもないとわかっているから。

その点においては『ロッキー・ザ・ファイナル』の変奏と言えるのだが、今回はスタローンに拮抗する好敵手がいることが頼もしい。ふたりとも最も得意とする類のキャラクターを演じることに一片の迷いもなく、風が吹き抜けるような心地良さにつながっている。過去作をネタにしたパロディギャグも飛び出すが、スタローンとデ・ニーロは堂々と伝説を背負い、なおかつ過去に囚われていないことを証明してくれる快作となった。

スタローンやデ・ニーロにピンと来ない若い世代なら元気過ぎるジイサン連中に驚くだろうし、同時代で彼らを追いかけてきた世代ならば、間違いなく「いま観るべき作品」だと断言したい。

『リベンジ・マッチ』
4月4日(金) ロードショー

『ぴあ Movie Special 2013 Autumn』(発売中)より
文:村山章