第三の居場所が必要と叫ばれる時代。先駆けてニーズに添った居場所支援をしている団体、居場所を探す人々、また活動の場を探す人々の出会いの場ともなりました。

学校に行かない、行けない不登校の小中学生が30万人となり、子どもたちの“第三の居場所”づくりが国の重要な政策課題となる中、東京都内で活動する様々な居場所が集まり、活動報告や情報交換をおこなう初めての大会が3月2日に開かれました。 大会のタイトルは「こどもの居場所大会in東京」。個性豊かな小さな居場所は、まだまだ発信力も資力も乏しく、自分たちを知ってもらい、同じ志を持ち活動する人たちとつながりたいとの想いにより企画され、大会を機に作った「WEB居場所マップ」も公開されました。(https://www.google.co.jp/maps/@35.7150164,139.7252711,10z/data=!3m1!4b1!4m3!11m2!2s-Zdb7s7iQRa2PD5zCj5c3Q!3e3?entry=ttu) NPO法人フリースクールまいまい(代表鴻池友江。渋谷区幡ヶ谷)が賛同者を集め実行委員会形式で本大会開催を実現しました。 以下、ソーシャルワーカー・ライターの後藤絵里さんに大会の様子をまとめていただきました。


会場となった東京・日本橋のサイボウズ東京オフィスはキリンやカンガルーの等身大の人形がいる遊び心あふれる場所です。そこで11団体が「パドレット」というオンラインツールを使って日頃の活動を紹介し、会場とのQ&Aに応じました。パドレット上で“ポスター発表”のみ参加した団体も多数ありました。このほか、居場所を卒業した学生や社会人の体験談、有識者のミニ講演、グループトークもあり、オンラインも合わせ約140人が参加しました。

以下、プログラムの順番にご紹介します。
■最初の登壇は「シン・スクール」(東京都清瀬市:https://www.shin-school.com/)です。マインクラフトやフォートナイト、VRやマンガなど、子どもが夢中になる「遊び」をベースにしたフリースクールです。八ヶ岳の山中での絶叫スマプラ大会やリアルマインクラフトといったゲームとキャンプの融合イベント、ゲームに出てくるアイテムを粘土でつくるモノづくり教室などリアルの企画も多数あります。
■「みんなのプロジェクト学校」(東京都渋谷区:https://minpro.my.canva.site/)は不登校の悩みを抱えた3人の小学生と親たちで立ち上げたプロジェクト主体の居場所です。毎週月曜、代々木八幡のコミュニティセンターで活動中。屋台に出店して得たお金で乳児院にプレゼントを届けたり、子どもたちの理想の運動会を企画・開催したり、子ども主体の様々な企画を行っています。
■「滝野川高等学院&浮間ラボ」(東京都北区:https://takinogawa.club/)…小学生から大学生まで約60人が通うフリースクールです。通信制高校を卒業するための学習支援を行うサポート校でもあり、学習塾で夜間の学習支援も行っています。教室は徒歩圏内に3か所。代表は通信制高校で進路指導や少年野球の監督経験もありカリキュラムも充実しています。
■「なにかし堂」(東京都荒川区:https://nanikashido.org/)…下町情緒漂う商店街の一角にある、小さな街の図書館です。1階の図書館には絵本からビジネス書まで2000冊が揃い、2階は学習塾や居場所になります。予約も利用料も要らず、子どもも大人もお年寄りも気軽に立ち寄れて、本も飲食も持ち込み可能。それぞれの時間を過ごします。
■「青草の原 れもんハウス」(東京都新宿区:https://aokusa.or.jp/lemon-house)…築65年の古民家を改修して生まれた居場所です。子ども、大学生や若者、子育てにちょっと一息つきたいお母さん、IT企業の会社員など多様な人たちがやってきます。誰でも参加できるけれど、「安心」を担保するため住所は非公開。人と人のつながりで利用者の輪が広がっています。

■ミニ講演1 「子どもたちと取り組むITを活用した居場所づくり」--サイボウズ株式会社執行役員 ソーシャルデザインラボ所長 中村龍太さん 
中村さんは週4日サイボウズで働き、残りの自由な時間を使い、フリースクール「ぴおねろの森」(千葉県印西市:https://www.pioneronomori.com/)の運営に理事として関わっています。長くIT畑で働いてきた中村さんは、日々のフリースクールの運営活動にデジタルを採り入れることで得た効果について話してくれました。
「ぴおねろの森」は週3日開校し、小学1年から18歳まで68人が登録、1日の利用料は500円です。スタッフは6人、利用者は増える一方で、日頃から利用者に寄り添う時間の確保、保護者とのコミュニケーションの充実、スタッフ間の意思疎通などの課題を抱えていました。そこでサイボウズのキントーンを導入し、これに連携をする「ぴおスペース」という入室記録システムなどを開発しました。入室情報を在籍校とも共有しており、子どもの安否確認システムの機能も果たしています。
利用者1人ひとりの基本情報、入会の経緯や記録簿といったデータベースは、スタッフ間の情報共有だけでなく、保護者が閲覧できる部分を区切って保護者とのコミュニケーションにも使っているそうです。こうしたデジタルの活用でリーダーの仕事は4割減、学校とのコミュニケーションコストも減るなど、大きな成果が得られたそうです。


■ミニ講演2 「学校教育の現状と子どもたちの未来へ向けて~渋谷区の教育改革から見えてきたこと~」 渋谷区議会議員・神薗まちこさん
神薗さんは前職のベネッセ時代から学校教育支援の事業や子育て支援のボランティアに関わり、現在は教育と子育てを政策のメインにしています。東京都や渋谷区の取り組みについて話してくれました。日本の子どもたちの学ぶ力は科学、数学、読解力などはOECD加盟国の中で常に上位にあるのに、幸福度(well-being)では、OECD諸国平均の84%に対して59%と低いそうです。「自分が世の中を変えられるという自信がない、自己肯定感の高い子どもが少ないことが日本の課題と言われています。」と神薗さん。
学校の教室はいま多様性にあふれ、先生1人だけでは対応しきれない状況になっているといいます。休職する先生の数も過去最高だといい、「もはや学校だけでは限界。地域、社会とともに、どう子どもたちの成長と学びを支えていくかが課題」だと言い、1.先生2.ICT3.地域の力、の3つの柱で学校教育をリデザインしていくことが求められていると言います。
渋谷区では2024年度から午後の時間をすべて探究の時間にあてるため「シブヤ未来科」の取り組みが拡充されます。地域との連携では、地域人材ポータルサイトの立ち上げ、学校の部活の地域移行、老朽化した学校校舎の建て替えと地域の施設を併設させる取り組みなど
が進んでいます。神薗さんは、「重層的な支援体制づくりによる多様な居場所支援が必要です」と結びました。

■NPO法人青梅の虹any RAINBOW ROOM(東京都青梅市:https://rainbowroom7.wixsite.com/website) クッキングやスポーツなど、火曜を除き日替わりで活動メニューが決まっており、子どもたちはそれを見て参加したい日を選びます。子どもの状態によって1対1の個別対応も可能。時にはバスや電車で近くの駅まで行ってみたり、フリーマーケットに作品を出品したりして子どもたちの小さな挑戦を支えます。保護者支援にも力を入れています。
■自由な学び場 HIRU-NET(東京都武蔵野市:https://www.hirunet.com/)…自然探索や野外活動、街探検など「体験」を大切にする少人数のフリースクールです。午前は自主的な課題をして、午後はお弁当を持って近所の井の頭公園へ。週に一度は「お出かけ探検」に出かけます。「雨の日は寒い、夏は暑い。他人と触れ合えばトラブルも生まれる。小さなトラブルを体験して何とかする力を身につけてほしい」(代表の今田さん)
■ainiスクール 小・中等部(オンライン:https://helloaini.com/entry/featuring/aini-freeschool/)…小学生がオンライン×メタバース空間で学んでいます。午前は探求授業や5教科授業、午後は色々な職業の「プロホスト」が授業をします。「プレゼン会社」や「イラスト会社」などスクール内に会社組織をつくり、仮想通貨「ainiコイン」でお仕事を受発注したり、修学旅行を子どもたちで企画したりとユニークな取り組みもしています。
■NPO法人フリースクールまいまい(東京都渋谷区:https://irukayainfo1.wixsite.com/home渋谷区の住宅街の一角にある民家「いるか家」を運営しています。子ども食堂、ショートステイの預かり、施設や里親のもとで育った社会的養護の経験者たちの交流の場など。開所は基本的に午後で、手話の勉強会、トークルーム(当事者研究)や癒しの時間(ハンドマッサージ)など、幅広く色々なイベントを企画しています。
■一般社団法人にじーず(東京、大阪など:) 10代から23歳までのLGBT(かもしれない人も)のユースが集まる無料の「居場所」を月1回日曜日に開いています。テーマを決めてグループ対話をしたり、ボードゲームやクラフトづくりをしたり。いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。何をして過ごすかも自由です。場所によって交通費の補助もあります。他団体が参考にできる無料の研修動画も公開しています。
■自立生活センターSTEPえどがわ(東京都江戸川区:https://www.step-edogawa.com/障害者が自らの意思で人生を選び、地域の中で主体的に生きていく「自立」を目指し、障害者自身がその支援をおこなうことを目指す組織です。スタッフ自身が「バリアフリー戦隊・ダンサナクセイバー」となって地域のイベントや小学校の出張授業に出向き、人々の物理的、精神的な”バリア“をなくそうと奔走しています。

■ミニ講演3 「神経発達症のある子どもたちの余暇活動支援、居場所支援」--金子総合研究所所長 東京学芸大学非常勤講師 加藤浩平さん
加藤さんはASD(自閉スペクトラム症)や発達障害をもつ人たちへの余暇活動支援についてお話してくれました。「ASDや発達障害がある子どもたちは、その障害特性や過去の失敗体験から、特に思春期以降、社会参加を忌避する傾向にある。子どもたちの社会参加の機会を奪わないためにも余暇活動支援は大切です」と言います。
実践・研究から効果的な2つの遊びを紹介してくれました。1つは「趣味トーク」で、参加者はゆるい枠組みの中で好きなコトやモノを順番に発表していきます。どんな発表の仕方でも、どんな姿勢で参加してもよいですが、ほかの人が好きなものを絶対に否定しないこと、がルールです。「皆でルールを守ることで自分の好きなものを話す環境が保障されることが大事です」。2つめが「TRPG(Table Role-Playing Game)」です。オンラインのロールプレイングゲームと内容は同じで、ゲームマスターとプレイヤーに分かれ、キャラクターの「役割」を決めて行います。TRPGに参加することで、子どもたちの情動的なウェルビーイング、友だちとの関係が向上したとの結果も出ています。
いずれの遊びも自閉傾向のある子どもたちの特別な興味に寄り添い、それを媒介としてコミュニケーションを楽しむ場をつくること、子どもたちが安心・安全に表現できる場を保障することが目的です。「子どもたちの『表現したい』という思いが他者とのかかわりへの意欲につながります。居場所の選択肢を増やすための環境づくりを支援していくことが大事です」と加藤さんは話してくれました。

■居場所OBたちの語り
その後、それぞれの”居場所“を卒業した大学生のTさんと社会人のMさんが自分たちの体験を話してくれました。Tさんは小学校3~6年と「東京コミュニティスクール」に、中学生からは「東京サドベリースクール」に通いました。2つのオルタナティブスクールは校風が「真逆でした」。前者はテーマ学習が基本で自分でテーマを決めて調べて発表します。「答えがない問いを探求することは面白かったですが、とても忙しかったです」。後者は授業もテストも一切なく、自ら学習のカリキュラムを考えなければならなかったそうです。Tさんは中上健次の小説と出会って差別や人権の問題に目覚め、当時通っていた個人塾も「居場所」となりました。周りの人たちから様々な刺激を得て今の自分があると話してくれました。
Mさんは幼い頃に両親が離婚し、母親と2歳下の弟との3人暮らしを経て、小学1年で母が再婚して6歳下の弟もできました。しかし母親はお酒への依存がやめられず、継父は早朝から深夜まで働いてほぼ家におらず、子ども3人はネグレクトの状態でした。Mさんは2人の弟の食事や身の回りの世話を担い、学校に行かなくなり、不良仲間とつるんだりもしました。そんな彼の支えとなったのは中学で出会った地域の和太鼓グループでした。いったんは離れたものの、働き始めて再び門を叩き、今では師範代を務めるまでに。結婚して2児の父となり、「和太鼓を通じて人を笑顔にできることを知りました。自分と同じ境遇にいる子どもたちの支えになれたらと思っています」と話してくれました。

以上、「こどもの居場所大会in東京」のご報告でした。
大会のHPからはWEB居場所マップ及び大会の詳細報告文書、ダイジェスト版動画に一定期間アクセス出来る予定です。
https://irukayainfo1.wixsite.com/home/contact-6
<団体の情報>
NPO法人フリースクールまいまい
設立(登記):2002年9月5日
ホームページ:https://irukayainfo1.wixsite.com/home
問合せ:irukayainfo1@gmail.com
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ