『神様のカルテ2』 (C)2014「神様のカルテ2」製作委員会 (C)2010夏川草介/小学館

主演・櫻井翔の戸惑いが表れたかのように、彼が演じた主人公の内科医・一止のキャラクターも設定や展開もぼんやりした印象だった前作と違い、今回はすべてが洗練されていている。それこそ、地方医療の現実に向き合う新米医師の成長を描いた1作目よりも、この続編はシンプルかつ普遍的な問題を真正面から確かな筆致で描いていて、目が離せない。

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主題はポスターのキャッチにもなっている「仕事をとるか? 家族をとるか?」というストレートなもの。医師の場合はそこに患者の命が関わってくるから、普通の人と少し状況は異なるが、家族と一緒にいる時間を犠牲にしてまで仕事をすることに疑問を持ったことは、誰もが一度ぐらいはあるはずだ。

その一方で、病院に泊まり込み、寝る暇を惜しんで患者と向き合う一止のような医者にはいてもらわないと困るし、彼らに対する感謝と尊敬の気持ちを忘れるわけにはいかない。つまりは、簡単にひと括りでは答えを出せないものなのだが、本作は敢えてその難問に踏み込んでいる。 患者のことを第一に考えている一止と、定時で帰り、時間外の緊急対応にも応じない一止の大学時代の同期でもあるエリート医師・辰也。映画はそんな相反するふたりの在り様を見つめ、それぞれの事情を彼らを取り巻く家族との関係を通して浮き彫りにしていく。

藤原竜也がこれまでになく抑えた芝居で辰也の苦悩を体現しているのも見逃せない(『サンブンノイチ』でも快演。今年、再評価されるはず)が、この映画が本当に素晴らしいのはここからだ。若き医師たちの対立のドラマが家族それぞれの幸せの形をさぐるものに変わり、さらには“命”の物語へと鮮やかに昇華。タイトルの“神様のカルテ”の意味も伝えながら、ラストでは前面に押し出されていた問いに観客自身がじっくり向き合い、それぞれの答えを導き出せるようにしているのが心憎い。これぞ、『半分の月がのぼる空』『くじけないで』など繊細なタッチで知られる深川栄洋監督の真骨頂。とにかく上手い。深川節が久しぶりに冴えわたり、その揺るぎないメッセージが、大きな感動とともに深く心に刻まれることになる。

『神様のカルテ2』
公開中

文:イソガイ マサト