『アデル、ブルーは熱い色』に出演したアデル・エグザルコプロス

カンヌ映画祭で最高賞パルムドールに輝いた『アデル、ブルーは熱い色』が5日(土)から公開になる。オーディションで抜擢された主演女優アデル・エグザルコプロスは「この映画は愛に対する賛歌」だという。

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本作の主人公アデルは教師になることを夢見ている平凡な学生だ。彼女はある日、通りでブルーの髪の女性とすれ違い、一瞬にして心を奪われる。やがてブルーの髪の女性=美大生のエマと再会したアデルは、惹かれあい、恋に落ちていく。フランスのコミックが原作だが、チュニジア出身のアブデラティフ・ケシシュ監督は主演のアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥにカメラの前で徹底的に“リアル”に生きることを求めた。「監督はいつも真実を求める人で、可能な限り現実に近いものを求めます。だから監督は決して役者を拘束しません。普通の監督であれば俳優の動線を指示しますが、彼はそういうことを一切しないのです。即興も行いましたし、アイデアがあれば耳を傾けてくれました」。

原作では“クレモンティーヌ”だった役名は自身の名と同じ“アデル”に書き換えられ、決まったセリフもなく、監督はひたすらカメラを回しながら、人が出会い、恋に落ち、喜び、傷つく瞬間を捉えていく。「カメラを止めずに彼は演技指導をしますし、カメラが回ったまま指示が来ました」と振り返る彼女は、本作の演技を「自分という存在をカメラの前に投げ出す」と表現する。「映画のためにリサーチは一切しませんでした。この映画はふたりの恋愛物語ですが、同性愛という観点から観るべきではないでしょう。ふたつの個性が存在して、そこに初恋の衝撃があった。そういう風に私は演じました」。

通常の恋愛映画は登場人物の感情が高まった瞬間だけを効率よく語っていく。しかし本作は、彼女たちが迷い、ひとりで考え、時に感情を隠して日常生活を営む時間さえも描き出す。「恋をしている時というのは、同時に自分自身を探している時間でもありますよね? 自分が相手にふさわしい存在であろうとしますし。カップルでいることは様々なことを分かち合う美しい経験ですが、人は完璧ではないから、同時にツラい体験でもあるわけです」。

誰かを好きになることは、自分自身と向き合うことでもある。本作は、ねばり強く撮影された日常描写を丹念に積み重ねて、誰もが経験する恋愛の喜びや痛みを容赦なく描いていく。エグザルコプロスは「アデルを演じて、自分自身と向き合って“成長しているな”と感じました。同時に“うまくいかなかった時の孤独感”も実感しました」と語ったが、それは多くの人が恋愛を通じて感じることそのものではないだろうか。

『アデル、ブルーは熱い色』
4月5日(土)より新宿バルト9、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開