『5つ数えれば君の夢』(C)2014『5つ数えれば君の夢』製作委員会

山戸結希(やまと・ゆうき)。すでにご存知の方もいるとは思うが、この名前は覚えておいてほしい。2012年、大学在学中に発表した処女作『あの娘が海辺で踊ってる』のポレポレ東中野での自主上映が大ヒットとなるなど、彼女は今後の飛躍が期待される新世代監督。最新作『5つ数えれば君の夢』では、女子高生たちの揺れ動く青春を描き上げた。

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今回、主演は日本武道館公演を2年連続で成功させるなど、ガールズ・ダンス&ボーカルグループとして人気上昇中の“東京女子流”。聞くと山戸監督は本作で出逢うまで彼女たちの存在を知らなかったという。さらにライブ映像を見るといった彼女たちを知る予習的なこともあえてしなかったそうだ。「こう思ったんです。アイドルグループとしての東京女子流ではなく、彼女たちひとりひとりの個性や魅力を作品に反映させたいなと。なので、変にメディアにある情報から彼女達をラベリングしてしまうより、あくまで私自身が抱いた彼女たちの印象を大切にして、5人それぞれが主人公として輝く脚本を書けたらと思いました」。

こんな想いを抱きながら書き上げた脚本は文化祭を前にした女子高が舞台。ミスコンテストでどこか学校全体が浮き足立つ中、園芸部で地味な性格のさく、わが道をいくダンサーのりこ、学園女王の宇佐美、彼女を敬愛する都、文化祭実行委員長のみちるという少女5人それぞれの視線の先に映る世界が描かれる。そこから見えてくるのは、異性へのときめき、同性への愛とも憧れともとれる想い、女の子ならではの嫉妬や憎悪など。繊細で傷つきやすい少女たちの胸の内が浮かびあがる。イジメ問題など社会へのメッセージも込められた作品にも映るが、山戸監督は「確かにそういう捉え方もあると思いますが、社会に対して問題提起したいというよりは、個人にとっての心象風景を一番大切に見せたかったです。10代の少女たちがきらめく瞬間を、匿名性においてではなく、もっと生身の心として提示したかったです」と明かす。

また、これは観てもらえれば感じられることだが、山戸監督の表現法は独自性のあるもの。中でも巧妙な構成と独特の間をもって紡がれた映像は、不思議と魅入ってしまうような独特のリズムを刻む。「今後も努力を重ねて、今よりもっとたくさんの人に観てもらえるような、自分ならではのエンターテインメント性のある映画を作っていけたら」と語る山戸監督。豊かな才能を持つ彼女の感性に触れてほしい。

『5つ数えれば君の夢』
公開中

取材・文・写真:水上賢治