カズオ・イシグロと倉持裕との意外な関係性とは?

2014.4.7 18:35配信
倉持裕 倉持裕

2010年に映画化もされたカズオ・イシグロの傑作『わたしを離さないで』が、蜷川幸雄演出により舞台化される。そこで日本語版の脚本を手がけることになった、ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕に話を訊いた。

舞台『わたしを離さないで』チケット情報

「カズオ・イシグロさんに最初に触れたのは、映画『日の名残り』(=原作がカズオ・イシグロ)です。その主人公スティーブンスの生真面目さを強調したコメディを作りたいと思い、鎌塚シリーズ(=倉持が作・演出を務める舞台)が生まれました。カズオ・イシグロ作品の魅力のひとつは、その冷静で客観的な筆致。作家の主観が抑えられている、あるいは巧妙に隠されているために、読者は何にも縛られずに想像を膨らませることができる。作品全体に紳士的な態度や品を感じ、とても惹かれます」

そんな縁もあり、『鎌塚氏、放り投げる』(2011年)の公演中に今回のオファーがあった際は「運命を感じた」と言う。そして本作『わたしを離さないで』は、日本語訳小説の発売後すぐに購入。そのまま一気に読み終えてしまったらしい。

「話が進むにつれ、怒りを覚える対象がまるで別方向へとシフトしていくところに魅力を感じました。始めは、語り部キャシーに意地悪をし続けるルースに、次に、ルースの欠点ばかりを語り続けるキャシーに、最後に、彼女たちを取り囲む社会に対して激しい怒りを覚えます。読書中、ここまで激しい感情の振幅を繰り返した作品は他にありません」

もちろん倉持はオリジナル作品を書き下ろす作家でもある。それだけに、原作のある作品を脚本化する上ではこんなことを肝に銘じている。

「まず、自分が原作に対して感じている魅力を整理して、純化することです。そうすることで自分の原作に対する個人的な思いに自信が持てます。また今回、原作では語り部のキャシーを客観的に描くことが、最も楽しかったところです。その作業こそが、自分のオリジナリティを発揮できる最大の点だったと思います」

また本作の演出を蜷川が手がけること。それは倉持にとって大きな楽しみのひとつだ。

「この作品は誰もやったことのない方法で“生きること”について言及しています。そして蜷川さんの演出によって、主人公の3人を始め、登場人物たちは、舞台上で生命力をみなぎらせると思います。そうして生身の生命を見せつけることで、小説よりも映画よりも、このテーマについて強く訴えることができるかもしれません」

公演は4月29日(火・祝)から5月15日(木)まで彩の国さいたま芸術劇場大ホール、5月23日(金)・24(土)に愛知県芸術劇場大ホールにて、5月30日(金)から6月3日(火)まで大阪・梅田芸術劇場にて。チケットは発売中。

取材・文:野上瑠美子

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