パスカル・プリッソン監督

年度明けのこの時期、良く目にするのは新一年生のほほえましい登校風景だろう。でも、世界には想像を絶する危険や困難を伴う通学路も存在する。そんな困難を経て学校に通う子供たちを追ったドキュメンタリー映画『世界の果ての通学路』がフランスから届いた。

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本国で動員120万人を超す大ヒットとなった本作を手掛けたのはナショナル・ジオグラフィック誌やBBC放送などで自然を題材にした数多くの映像作品を発表してきたパスカル・プリッソン監督。この映画の起点となった出来事をこう明かす。「ある作品でケニアをロケハンしていたとき、マサイ族の子供が走ってきたんだ。聞くと2時間かけて学校に行く途中という。それまで私は世界の辺境をいろいろと取材してきたのですが、そのときまでこんな大変な思いをして学校に通っている子供がいることにまったく気づいていなくて。彼らのような子供がほかにもいるのではないかと思い、ユネスコと教育関連の問題に取り組む国際機関<エデュ・エ・アクシオン>の協力を得ながら調べ始めたのです」。

こうして監督はここに登場する子供たちに出会うことになる。「象やキリンなどの野生動物に遭遇する危険を常に伴うサバンナを走り抜けて学校に通うケニアのジャクソン、パタゴニアの平原を馬で1時間半もかけて通学するアルゼンチンのカルロス、モロッコの山岳地帯から4時間かけて全寮制学校に向かうザヒラ、生まれつき足が不自由で弟ふたりに助けられながら登校するインドのサミュエルの4人を主人公に撮影をしたいと思いました。ほかにも候補はいたのですが、今回登場する4人の子供は学校に通う大変さもさることながら、学ぶことで自分の未来を切り拓こうとしていた。なによりも私が胸を打たれたのはそのことで。決して恵まれているとはいえない環境の中で、夢を叶えようと必死に学ぼうとする彼らの姿に深く感動したのです」。

撮影後の現在も子供たちとの交流は継続中。子供たちのサポートも積極的にしていきたいそうだ。「今も彼らは困難の中にいます。だから、撮影が終了したからといって“これでおしまい”と見捨てることなんてできない。今月海外ではDVDが発売されるのですが、その利益の一部を彼らの主に学習面のサポートにあてる計画をすでに立てました」。

「今後、彼らがどのように成長していくのか楽しみ」と語るプリッソン監督。その優しい眼差しが映す出す、未来を描く子供たちの姿を見つめてほしい。

『世界の果ての通学路』
4月12日(土)よりシネスイッチ銀座ほかにて公開

取材・文・写真:水上賢治