デジタルエンターティメント研究会が4月24日に開催したトークイベント「日本型e スポーツの過去・現在・未来」に登壇した社会学者の加藤裕康氏によると、コンピュータゲームを競技として捉える「eスポーツ」の発展方法は、世界的に見て「ボトムアップ型」と「トップダウン型」の2パターンに分かれるという。日本はどのような発展がベストなのだろうか。

「ボトムアップ型」は、持ち寄ったPCをローカル・エリア・ネットワーク(LAN)で接続し、複数人が同時にゲームをプレイする「LANパーティ」で拡大したコミュニティを中心に成長してきた。例としてよく挙がるのは、欧米のeスポーツ業界だ。

一方の「トップダウン型」は、2000年に国主導でeスポーツ協会を立ち上げてプロゲーマー登録制度を敷いた韓国や、03年にeスポーツを正式体育種目に指定した中国など、国を中心に発展してきた例にあがる。なお、韓国は現在、プロゲーマーの登録制度を廃止している。

日本の場合、「2パターンが並行している状況にある」と加藤氏は分析する。「ボトムアップ型」は、ゲームセンターやインターネットを中心としたコミュニティで、多数存在する。一方の「トップダウン型」は、18年2月に設立した「日本eスポーツ連合(JeSU)」が、ゲーム業界主導で力のある主体として集まり、eスポーツを盛り上げようとしている。

加藤氏は「この状況が今の日本におけるeスポーツの問題にもつながっている」と指摘する。JeSUは、これまで高額賞金制大会のネックになっていた景品表示法を回避するために「プロライセンス」を発行しているが、これに対し「JeSUにプロゲーマーを定義する権利があるのか」など既存のコミュニティから反発の声があがっている。

加藤氏は、JeSUの取り組みのなかでもプロライセンス制度について疑問があるという。「ライセンス制度は、政府や関連団体が業界やプレイヤーの首根っこをつかむために存在していることが、歴史的に見て多い。ボクシングのように危険を伴う競技ならライセンスは大切だが、ゲームでは必要ないのではないか」と述べた。

「すでにコミュニティが確立している日本では、性急にトップダウン型で進めようとしても反発を買ってしまう。業界がeスポーツを盛り上げようとしても、コミュニティを無視すれば上手くいかないだろう」(加藤氏)。

JeSUの浜村弘一理事は、「プロライセンス制度は、コミュニティの邪魔をするものではなく、応援するもの」と説明するものの、プロライセンス発行タイトルの選定基準など実態は明確になっていない。ゲーム業界で、日本のガラパゴス化が進めるべきではないだろう。