(左から)郭智博、廣原暁監督

園子温、石井裕也らの商業映画デビュー作を手がけてきた、「ぴあフィルムフェスティバル」による若手映画作家への製作援助システム「PFFスカラシップ」の最新第22回作品『HOMESICK』。前々作『世界グッドモーニング!!』(09)がポン・ジュノやジャ・ジャンクーから高く評価された新鋭・廣原暁による本作は、家族のいなくなった自宅にこもり、毎日をやり過ごしていた無職の青年が、ある日襲撃してきた子供たちとの交流を経て、外に出るまでを見つめたもの。4月16日(水)にDVDが発売されるのを記念して、廣原監督と主演の郭智博が2年前の撮影を振り返った。

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廣原監督が最初にイメージしたのは、黒沢清監督の『人間合格』のような家族の映画だったという。「家族の関係や役割を無視した家族映画を撮りたかった。そしたら必然的に、全員が一か所に縛られている必要がなくなって、脚本を書き進めていくうちに、主人公の健二だけが家に残っている形になった」と明かし、「どこでも行ける自由を手に入れると、逆にどこにもいけない。そこはある種自然な、素直な気持ちだと思いました」と語る。

健二に『リリイ・シュシュのすべて』(01)、『花とアリス』(04)などの郭を起用したのは「初めて会ったときに、何を考えているのか分からなかったから」と笑う廣原。それに対して郭は「健二は自分と似てるところがありました。僕も仕事や家族のことでリアルに悩んで、家で何もせずにモヤモヤしていたヒドい時期がありましたからね」と告白する。

だが、いまは俳優の仕事でやっていきたいという気持ちを強く持つようになった郭は、廣原監督のことも「僕より若いのに、撮りたい画がちゃんと頭の中にあるのがスゴい」と称える。それを受けて「この作品では、思い通りの画を撮りたいという欲求がいつもより強かった」と廣原。「それに、ただ寝転んでいるシーンって普通は撮っていても面白くないけど、郭さんは鼻を掻くちょっとした仕草が魅力的なので楽しかったですね」と絶賛する。

そんな彼らが産み落とした『HOMESICK』が、何をしたらいいのか見えない現代を生きる人たちの背中をそっと押してくれるに違いない。『HOMESICK』DVD 4月16日(水)発売取材・文:イソガイ マサト