平野綾 平野綾

4月13日、『エリザベート』『モーツァルト!』などのヒット作を生み出している現代ミュージカルの巨匠、ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイの最新作『レディ・ベス』が東京・帝国劇場にて世界初演の幕を開けた。

ミュージカル『レディ・ベス』チケット情報

16世紀、英国黄金期を築いた偉大な女王エリザベス1世の若き日を描いた物語。彼女が女王に至る道のりは決して平坦なものではなく、肉親との確執あり、陰謀あり、時には命を狙われることすらある波乱に富んだものだが、意外なまでに作品から受ける印象は穏やかだ。中でも架空の存在である吟遊詩人ロビン・ブレイクとの恋物語が爽やかで、また彼女を取り巻く人々の愛情も温かく、作品全体として人生への讃美に満ちたものとなっている。名匠リーヴァイによる楽曲は心に染みる美しさで、ケルト調のノスタルジックなメロディを中心に、スパイスの利いたパワフルなナンバーを織り交ぜ緩急をつけてある。またキャスト陣の熱演も光り、特にヒロイン・ベス役の平野綾は安定した歌唱力でビッグナンバーを歌いこなすとともに、自らの運命をしっかりと受け入れるプリンセスを地に足を付け演じていた。大作ミュージカルとしては『レ・ミゼラブル』に続き2作目の出演で主役に抜擢された彼女だが、正統的なミュージカル歌唱をものにしており、客席に新たなミュージカル界のプリンセスの登場を大いに印象付けたに違いない。その他、山崎育三郎、未来優希、涼風真世、山口祐一郎らがそれぞれの個性を存分に活かし作品を彩る。充実のキャスト陣から日本ミュージカル界の熟成をも感じられた。

初日のカーテンコールで平野は「この日を迎えられたことがまだ夢のようで信じられない。ベスの役作りのために彼女と向き合うことで自分が未熟なことに気付かされ、この作品で私も成長させていただいたと思います。やっと始まったばかり、ここからもっともっと良いものをお届けできるよう、もっと成長していきたい」と感慨深げに挨拶。さらにウィーンから来日したクンツェ、リーヴァイ両氏も登壇し、「今日は本当に特別な一夜」「これからも毎晩公演が行われる時、私たちの気持ちは常に皆さんとともにある」と感謝とエールを贈っていた。

同公演終了後に行われた会見では、改めて平野が「もともとミュージカルがやりたくて、子役からこの世界に入った。改めて夢が今日叶ったんだなと実感しています」と興奮気味に話し、同じくWキャストでベスを演じる花總まりも「本当にすごい作品が日本で生まれたと心から思っています。これから再演を重ねていける作品。ぜひひとりでも多くの方に観に来ていただきたい」とアピールした。

東京公演は5月24日(土)まで同劇場にて。チケットは発売中。その後大阪、福岡、愛知でも上演される。