本当にいろんなことがあった2011年の日本にも、当たり前だけどクリスマスはやってきた。いつもどおりカップルは愛を確かめあい、いつもどおり独り者は孤独を抱きしめた(自分含む)。そんな2011年12月24日、おそらく1年のうちもっとも多くのカップルが集まる場所であろうクリスマス・イブの原宿で、刺激的なイベントが行われた。

ラフォーレ原宿が年に一度開催するパフォーマンス・イベント『HARAJUKU PERFORMANCE+』。2007年の初回開催から5周年を迎えた2011年は特別バージョンとして『HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE』と題して、宇川直宏によるライブストリーミングスタジオ兼チャンネル『DOMMUNE』とコラボレーションし、12月20日~24日の5日間にわたってさまざまなパフォーマンスが披露された。詳しい内容はこちらを参照していただきたいのだが、一見カオスに見えて、それぞれが絶妙にリンクしたラインナップは、このイベントだからこそ実現できたものだ。8月に開催が予定されていた『FREEDOMMUNE 0 <ZERO>』も、『DOMMUNE』という放送局自体もそうだが、宇川直宏という人のあらゆるカルチャーを飲み込む容量の底の知れなさには、つくづく驚かされる。

今回興味深かったのは、宇川とラフォーレがコラボレーションし、ただプログラムを組むだけでなく、ふだん渋谷の地下スタジオで数十人のオーディエンスを前に配信している『DOMMUNE』を、そのまま原宿のど真ん中に“お引越し”してしまう、というコンセプトだ。実際、会場では『DOMMUNE』のスタッフがステージ上のパフォーマンスを撮影し、ステージ横で宇川本人が配信画面をスイッチングするなど、『DOMMUNE』の現場が完全再現されていた。さらにステージ後方のスクリーンには実際の配信画面が映し出され、リアルタイムでツイッターのコメントを見ることもできた。

12月24日のプログラムは、第1部が「原宿をリセット!?―原宿の新たな展望を喚起、希望と可能性に付いて語り合う」と題し、司会に平川武治、猪子寿之(チームラボ)、森永邦彦(ANREALAGE)、村田明子(MA déshabillé)を迎えたトーク・セッション、第2部がsalyu x salyu(サリュ・バイ・サリュ)のライブ、という2部構成だった。

まず第1部のトーク・セッション、これが想像以上に面白かった。トークのお題は大ざっぱに言うと「原宿という街は今後どうなるのか・どうなるべきなのか」というものだったのだが、話の着地点はいっこうに定まらないし、各人の意見や主張は微妙にすれ違うし、途中宇川本人がスイッチング・ブースから議論に参加しさらに話が展開するなど、終始スリリングなやりとりが繰り広げられた。「この人たちが集まって話すのね、じゃあこんな感じで面白くなりそうだな」というような、聴き手を安心させる予定調和がまったくない、貴重な現場だったと思う。

続く第2部は、salyu x salyuのライブ。シンガーSalyuが小山田圭吾(CORNELIUS)とタッグを組み、昨年アルバム『s(o)un(d)beams』を発表、すぐさま音楽ファンを中心に絶賛を集めた。その後各地のフェスやワンマンツアーなど精力的にライブを展開していたのだが、どのライブもタイミングが悪く見ることができていなかったため、滑り込みセーフでようやく見ることができた念願のステージだった。今回はSalyuを含む4人のコーラス隊(とは言え、彼女たちも様々な楽器を演奏する)に、ギター(&ドラム)で小山田圭吾、ミニムーグで大野由美子(Buffalo Daughter)が参加する、アコースティック・テイストな6人編成でのステージとなった。

実はライブ自体は以前『DOMMUNE』でアルバムリリース記念ライブを配信した時に映像で見ていたので、ライブの構成などはすでに把握していたつもりだった。しかし、普通に考えたらまず生では再現不可能だろうというこんな曲↓

salyu×salyu『ただのともだち』合成ver.


が目の前で具現化されていくさまを目の当たりにすると、その迫力にただただ口をあんぐりするしかなかった。たった一拍・一音ずれただけで全てが破綻してしまうほど緻密に積み上げられた音のひとつひとつを、機械以上の正確さと生々しいグルーヴを両立させながら演奏する彼らの凄みがそこにはあった。

本編最後に演奏されたのは、個人的にいちばん聴きたかった曲『続きを』。歌詞を書いたのは坂本慎太郎だ。

salyu × salyu『続きを』(from "s(o)un(d)beams")special movie


上の動画は、2011年の3月29日にアップロードされたもの。当時、震災直後で混乱し疲弊していた心を、ふっと楽にしてくれたのがこの曲だった。そして12月24日。イルミネーションが輝きカップルがあふれる、いつもどおりに見えるクリスマス・イブの原宿のど真ん中で、本当は全然いつもどおりじゃなかった2011年を改めて振り返りながら聴く『続きを』は、とても優しく、かつ力強く、心に沁みた。2011年の終わりに、この曲を聴くことができてよかった。

さて第1部のトーク・セッションでお題となった「原宿は今後どうなるのか・どうなるべきなのか」という問いだが、『HARAJUKU PERFORMANCE+DOMMUNE』というイベントそのものが、その答えを探すヒントとなっている気がした。時代が変わっても、原宿が常に刺激的な街であり続けるために、今後も色々なかたちで、ラフォーレ原宿と『DOMMUNE』のコラボレーションが継続されることを期待したい。