左から、デヴィッド・ルヴォー、麻実れい、若村麻由美、堀部圭亮 左から、デヴィッド・ルヴォー、麻実れい、若村麻由美、堀部圭亮

6月東京・日生劇場で上演される『昔の日々』の製作発表が4月18日、都内で行われ、キャストの堀部圭亮、若村麻由美、麻実れい、演出のデヴィッド・ルヴォーが会見に顔を揃えた。

『昔の日々』チケット情報

ノーベル文学賞受賞劇作家で不条理劇の巨匠ハロルド・ピンターの作品。海辺の片田舎に暮らすディーリー(堀部)とケイト(若村)夫妻のもとを20年ぶりに旧友アナ(麻実)が訪ねてくる。3人の間で交わされる「昔の日々」。ところがその記憶は三者三様、時には「起こらなかったはずの記憶」まで語られる。何が真実なのか。観るものを幻惑させるスリリングなドラマが展開する。

演出はロンドン、ニューヨークなど世界的に活躍するルヴォー。日本でも1988年『危険な関係』(主演は麻実れい)を上演して以来、数々の話題作を手がけている。「『昔の日々』は人間の記憶や欲望について描いた作品。これまで、他の様々な戯曲が扱ってきた題材ですが、より凝縮した形で提示しています」とルヴォー。生前のピンターにピンター劇は日本で上演するのが最も適していると話したことがあるという。「戯曲には高度な圧の中で感情が凝縮されている。その凝縮の仕方は日本の芸術に多く見られる特長だからです」。

ルヴォー作品に初参加する堀部は「最初にお話をいただいた時はふるえました。この舞台に立つということは、本能的にすごいことだと感じて。自分の人生の中で大きな挑戦になる」。そんな堀部に「今はとても不安だと思いますが、死なばもろ共という作品なので、大丈夫」と笑顔の若村。ルヴォー作品は『令嬢ジュリー』以来15年ぶりとなる。「本読みした時、さすがに手ごわくて挑みがいのある大きな作品だと思った。内容のスリリングさに鳥肌が立つ瞬間が何度もありました」と手応えを話す。同じく『LONG AFTER LOVE』以来14年ぶりのルヴォー作品となる麻実は「まだラフな本読みを1回通したぐらいですが、もうピンターの圧力を感じる。デヴィッドと起こりうるだろう壮絶な闘いの後には、きっと素敵な何かが待っていると予感しています」と期待を寄せた。

またルヴォーは、3人芝居を日生劇場という大劇場で上演することについて「ピンターは小劇場用の作品を書いていないと考えています。彼の言葉やドラマはもっと大きな空間に置いてみて初めて明らかになるヴォルテージを備えている。ただ克服しなければならないテクニカルな問題はある。劇的なアクションをできるだけ観客席へ近づけ引き寄せる必要があります」と話し、「今頭に浮かんでいるのは、この戯曲をポストモダン版“能”のように表現できないかということ。3人の人物は生と死の間にある世界に閉じ込められていると捉えてみる。お能は題材として非常に有効な世界観。人物たちが過去に何度も繰り返し立ち返ってしまうその世界の不思議さを提示できるのではないか」と構想の一部を明かした。

公演は6月6日(金)から15日(日)まで東京・日生劇場、6月19日(木)から22日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。チケットの一般発売は4月19日(土)より。