大阪の電気街、でんでんタウンにあるドスパラ大阪・なんば店は、ソフマップなんば店のザウルス1とザウルス2に挟まれ、さらには5分ほど歩いた場所に3月21日に移転・リニューアルオープンしたパソコン工房本店がある激戦区に位置する。そのライバルたちに負けないよう、パソコンとパーツだけでなく、上海問屋のユニークな周辺機器やグッズで強みを打ち出している。(取材・文/佐相彰彦)

ドスパラ大阪・なんば店

店舗データ

住所 大阪府大阪市浪速区日本橋3-6-22 布谷ビル

オープン日 2003年4月4日

売り場面積 約990m2

従業員数 約20人

●活気づく「オタロード」でパソコンのよさをアピール

かつてパソコン専門店街だったでんでんタウンの一角に、サブカルチャーの街、通称「オタロード」がある。ここは、マンガやフィギュアのコレクター、海外からの観光客などが訪れる大阪を代表する観光名所の一つだ。最近では、トレーディングカードの専門店も軒を連ね、訪れる客層をさらに広げている。

この街に残るパソコン専門店は、こうした状況を逆に新たな客層を開拓するチャンスと捉え、攻勢に出ている。ユニットコムグループのパソコン工房本店は、3月21日、同じグループのパーツ専門店、BUY MORE大阪日本橋店の隣に移転してリニューアルオープン。開放的な入り口の近くにゲーム関連のデモコーナーを設置して、誰でも気軽に来店できる環境を整えた。ソフマップなんば店は、ザウルス1とザウルス2という2店舗体制で、ゲームソフトやフィギュアの買取りのほか、タイムセールを実施して客を呼び込んでいる。

そんなライバルたちに押されて客を減らしていたのが、10年以上の歴史をもつドスパラ大阪・なんば店だ。地下鉄の日本橋駅からオタロードに行くとき、入り口にあたる好立地にあるのだが、来店するのは古くから通う常連客が多く、その数も増えているわけではなかった。しかも、ザウルス1とザウルス2に挟まれる場所。条件は厳しい。しかし、この窮状から脱するために、ドスパラ大阪・なんば店は「改めてパソコンのよさを知ってもらう」(早稲本誠人店長)という基本に立ち返って、お客様を増やしている。Windows XPのサポート終了を目前に控えた3月には、駆け込み需要を中心に多くのパソコンユーザーが来店。「前年同月を大幅に上回った」と、早稲本店長は満足げだ。

●動画で店内に誘導 自社ブランドの優位性を訴求

ドスパラは、自社ブランドのパソコン「GALLERIA(ガレリア)」が最大の売れ筋商品だ。メーカー製パソコンよりも低価格で、ほかのショップブランドのパソコンと比べても、低消費電力・静音設計という点を売りにしている。さらに、カスタマイズにも対応する。ドスパラ大阪・なんば店は、この「GALLERIA」を徹底して前面に押し出した。

まず、店頭で動画を中心としたデモを実施。ネットゲームのキャラクターが鮮明な映像でスムーズに動いている姿を見せたり、スタッフが撮影したパソコンの自作風景、PowerPointの操作方法などの映像を流したりしている。「店頭でアピールしたことでお客様が興味をもち、パソコンコーナーを訪れるようになった」(早稲本店長)。お客様を店内に誘導したら、今度は接客。「他社のパソコンとどう違うのか、わかりやすく説明している」という。このていねいな接客は、「初期費用とランニングコスト、どちらも安くなるということで、購入を決断するお客様が多い」と、確実に成果に結びついている。また、価格が安いことから、最近は「カスタマイズで、ドライブをHDDからSSDに変えるお客様も多い」という。

第二のアピールポイントも、ドスパラ独自の商品だ。PC周辺機器や映像・音楽関連商品、生活便利用品など、あらゆるグッズを扱う通販サイト、上海問屋の商品を積極的に展示している。例えば、珍しい竹製キーボードを展示することなどで、「ここに来ればおもしろいモノがあるということを、お客様にわかっていただいた」という効果が現れている。加えて、500円台のUSB充電器やマルチAVリモコンなど、掘り出し物の販売を充実させたことで、「お目当ての商品を安く売っていないかどうかをチェックするために頻繁に、来店するお客様が増えた」としている。

そして、専門店として力を入れているのがパソコンパーツ。ASUSやASRockなどのマザーボードを、箱に入れずにそのまま展示している。品揃えに関しては、「マザーボードはもちろんだが、人気のあるグラフィックボードは他店に負けない」という。

さらに、スマートフォンの買取りコーナーを拡充したことで、「使っている端末を買取りに出して、新しい端末を購入するお客様が増えている」状況だ。買い取った端末は中古品として販売しているのだが、「iPhoneを中心に購入者が絶えない」そうだ。

ドスパラ大阪・なんば店が競合として意識しているのはパソコン専門店。「でんでんタウンでは、ほかの店舗に負けない」という気持ちで、今後も独自性を強く打ち出す取り組みを進める。

●店長が語る人気の理由――早稲本誠人 店長

入社以来、10年以上なんばで勤務する。でんでんタウンではパソコン専門店の閉店が相次ぎ、今では全国展開のパソコン専門店を中心に数店が残るだけだが、「街は活性化しているので、今後もパソコンの販売は伸びる」と前向きだ。

「パソコン専門店として、でんでんタウンでいかに存在感を高めていけるかが、ユーザーの信頼感向上につながるはず」という。もちろん、でんでんタウンがデジタル機器の街として再び脚光を浴びる日をイメージしている。大阪市内の大手家電量販店については、「メーカー製パソコンを販売しているので、競合しない」と言い切る。でんでんタウンで、競合店との戦いに明け暮れる日々が続く。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年4月14日付 vol.1526より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは