『ネイチャー』を手がけたパトリック・モリス監督

『ディープ・ブルー』や『アース』を送り出してきたBBC EARTHの最新作『ネイチャー』が間もなく公開になる。これまでも数多くのネイチャードキュメンタリーが作られてきたが、パトリック・モリス監督は本作を唯一無比なものにするべく、様々な策を練ったようだ。

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モリス監督は、ネイチャードキュメンタリーの分野で長く活動してきた作家で、25年超のキャリアを誇るが、本作はこれまでにないスケールでの撮影が行われたという。「撮影に入る前に1年かけて準備をしました。どんなエリアを撮影してスペクタクルを描くのか、ユーモアを織り込むのか考えたのです。そこで思いついたのは“舞台劇”でした。3D映像とサラウンド音響を駆使して、音楽や自然音をリードにしながら観客に自然の驚異を体験してもらいたいと考えたのです」。

そのため、スタッフは特注の3D撮影機材を駆使し、573日という膨大な時間を費やして撮影を敢行した。劇中では神秘の森、燃え盛る地下世界、異国の砂、幻想的な深海、天空の島など、7つの“大自然の王国”が描かれるがモリス監督はこれまで以上に動物だけでなく“自然そのもの”を描き出すことに注力したようだ。「7つのエリアそれぞれの個性をしっかりと描きたいと思いました。例えば海のシーンでは水中に入る前にまず“波”を撮影しました。砂地に生きる動物を撮る前には吹き付ける砂を撮影しましたし、森では風に舞う落ち葉と共にカメラが森の中に入っていきます。大切なのはその環境の個性が一番感じられるものは何かを考えることでした」。多くのネイチャードキュメンタリーの被写体は“動物”だが、この映画は“地球そのもの”が被写体になっている。

中でも監督がこだわったのは“水”の存在だ。「水は雲になって移動し、川になって流れ、滝を降下し、雨になって降り注ぎます。水をいかに活き活きと表現できるのか頭を悩ませていました」。監督がそう語るのは、カタチを変えて旅をする水を通じて雄大な自然と私たちが暮す街がつながっていることを示したかったからだ。「この映画は街の場面で始まり、街で終わります。私たちの多くは街で暮らしているわけですが、街にも多くの自然があります。人は環境について語る時、わかりやすく遠い場所にある森の奥地について語りますが、私たちの身の回りにも自然はあるのです。この映画を観て、人間が自然界の一部であること、自然界がいかに大切なものであるか感じてもらえるとうれしいですね」。

圧倒的な3D映像で自然の驚異を体験できる本作は“ファンタジー”ではなく、私たちの暮す場所を見つめなおすこともできる映画になっているようだ。

『ネイチャー』
5月2日(金) TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー