演出とストーリーに深みを持たせる“利き手”設定
スポーツや推理ジャンル以外で左利きキャラクターを活用した例が、ロボットアニメ『機動戦士ガンダム00』。
この作品に登場するグラハム・エーカーは35周年を迎えるガンダムシリーズの中でもきわめて珍しい“左利きのライバル”だ。彼が操縦するモビルスーツもわざわざライフルを左手に持つようカスタマイズされている。
量産機に乗ることが多かったグラハムだが、モビルスーツ自体を左利き仕様にしたことにより、シルエットを見ただけで視聴者にも遠目から「これはグラハム機だな」と判別しやすくなっていた。彼の特徴的なセリフの数々とあわせ、キャラクターの差別化に“左利き設定”が有効な役割を果たしている。
また、格闘・バトル系のお約束として、“なんとか敵の利き手(右手)を封じたと思ったら実は左利きだった”という展開が熱い。試合中にリアルタイムで「実は俺……隠してたけど左利きだったんだ」などというセリフが主人公の口から出てきたら燃えるし、逆にライバルがそう言ったなら読者は絶望的な気分にさせられる。
ハードな格闘描写に定評ある『軍鶏』は、こうした“利き手のスイッチ”を主人公とライバルの試合中、最高のタイミングで出して決戦シーンを盛り上げた。
人気の長編ファンタジー『ベルセルク』にも左右の手を効果的に使い分けるシーンがたびたび登場する。主人公・ガッツが大剣をもった利き手(右手)を封じられて絶体絶命、しかし左の義手に仕込んだ大砲が炸裂して敵を吹き飛ばす!というシーンは何度見ても痛快。利き手の印象が強ければ強いほど、逆側の手が活躍した時のインパクトは絶大になる。
このように漫画・アニメでの“利き手”設定は、うまく使えば作品をよりおもしろく見せることに役立つ。お気に入り作品に左利きのキャラクターが出てきたら、“その設定にはどんな意味があるのか?”を想像してみるのも楽しいかもしれない。