ルンバ880

3月に発売されたばかりの米アイロボットのロボット掃除機「ルンバ」の最新モデル「ルンバ880」をお借りし、自宅で試してみた。「ルンバ」に代表されるロボット掃除機は、ボタンを押すだけで部屋のなかをくまなく走行し、床の上のゴミやホコリを吸い込んでキレイにする便利な家電。育児ブログなどでは、「子どもが生まれる前に買ってよかった家電」の一つに挙げられている。今回は、実際に使ってみてわかったメリット・デメリットを紹介しよう。

●進化した「ルンバ880」は吸引力・清掃性能が向上 メンテナンスがしやすい!

複数の部屋を順番に掃除させる「ライトハウス機能」に対応し、付属品が充実した最上位機種「ルンバ880」と「ルンバ870」の2機種をラインアップする「ルンバ800シリーズ」の最大の特徴は、ルンバ史上最高の吸引力。「AeroForceエクストラクター」「真空エアフロー構造」「ハイパワーモーターユニット」の三つの先端技術を融合した新しい吸引機構「AeroForceクリーニングシステム」で、従来モデルの「ルンバ700シリーズ」に比べ、吸引力は約5倍、総合的な清掃性能は最大約50%向上したという。アイロボット公式ストアでの税別価格は、「ルンバ880」が7万6000円、「ルンバ870」が6万6647円。

吸引力だけでなく、メンテナンス性も向上し、これまでより扱いやすくなったという。バッテリ寿命は従来の2倍の約3年に延び、ネックだった維持費が下がった。ロボット掃除機は、紙パック式などの通常の掃除機との「2台もち」が基本。なぜなら、ダスト容器やフィルターなどの各パーツを清掃するために、通常の掃除機が不可欠だからだ。「ルンバ800シリーズ」は、従来より「お手入れが簡単になった」との触れ込みだが、まだまだ負担は大きいと感じた。ロボット掃除機に求める機能として、面倒なメンテナンス作業のさらなる簡略化やオート化を期待したい。

●毎日の清掃はルンバまかせでOK! ただし、事前の片づけは不可欠

筆者の自宅は、3LDK、広さ約70m2のマンション。室内はほぼフラットで、今回は、主にリビング・ダイニング(LD)と隣接する洋室、LDとつながった対面式キッチン、脱衣所、廊下で使った。一度だけ、寝室でも使ってみた。

ルンバの使い方は、任意の場所にルンバを置き、中央の「CLEANボタン」を押して運転を開始するパターンと、ホームベースに設置した状態で、同じように「CLEANボタン」を押すパターンの二つ。前者と後者では、スタート音が違う。後者の場合、清掃が完了すると自動的にホームベースに戻って充電するので、完全にルンバまかせでOKだ。スケジュール機能で曜日と時刻を設定して予約すると、毎週、自動で掃除を開始することもできる。

部屋の形状に合わせて自動走行するので、LDと洋室の境になる引き戸を開けた状態では約17畳+キッチン、閉めた状態では約12畳+キッチンを一度に清掃する。LDからキッチンへは、間に障害物を置かなければスムーズに移動した。さらに、LDと廊下のドアを開放していると、廊下を含めて清掃する。ルンバが入ってほしくない場所は、赤外線で仮想壁(見えない壁)をつくる「オートバーチャルウォール」(ルンバ870/770に付属)、「お部屋ナビ(バーチャルウォールモード)」(ルンバ880/780に付属)などを使ってガードする必要があるが、間取りの関係上、引き戸やドアを閉めるだけでほぼ制御でき、ルンバが落ちて停止してしまった玄関と廊下の境目以外は、ガードしなくても問題はなかった。

使用する前に、バッテリを充電して、掃除する場所を片づけておく必要がある。床の上のケーブル類に絡まりそうになり、あわててストップさせたこともあった。進化したルンバをもってしても、残念ながら事前の片づけは人力で行わなければならない。こうした掃除特有の面倒は、通常の掃除機と変わらない。

●ホコリや食べカスなどを強力に吸引 ゴミ捨ては少し面倒

一番のウリの「吸引力」は、実用上十分なレベル。洋室の引き戸とドアを閉めた「LD約12畳+キッチン」の範囲で何度か試したが、ダイニングの床に落ちた食べカスやホコリ、髪の毛などをしっかりと吸い込んだ。しばらく掃除機がけをサボっていたため、肉眼でもはっきりわかるほどのホコリがたまっていた寝室も、ルンバが一周するだけで、すっかりキレイになった。

最新のルンバ800シリーズは、ダスト容器の容量がこれまでの約1.6倍になり、より多くのゴミをためることができる。説明書によると、使用後は必ずダスト容器内のゴミを捨てなければならない。うっかりゴミ捨てを忘れてそのまま使用してしまい、ゴミを捨てようとダスト容器を取り外したところ、満杯近くまでたまっていた。使用範囲は、LDK+キッチンの組み合わせ2~3回、寝室(6.5畳)1回の30畳超。寝室にたまっていた大量のホコリが響いたようだ。規定通り、毎回捨てるぶんには余裕があり、ダスト容器の大容量化は、ゴミの捨て忘れ対策かもしれない。

新聞紙などを広げ、ダスト容器にたまったゴミを捨てる作業は、気分的に少し面倒。さらに、4~5回使用したら、フィルターや裏面の各パーツなどを清掃しなくてはならない。

従来のような毛の素材から、ゴム状の新しい特殊素材に変更した新ローラー「AeroForceエクストラクター」は、突起の部分で中央にゴミをかき込む設計で、髪の毛などが絡まりにくくなり、手入れがしやすくなった。清掃頻度は他のパーツより長く、3~4か月ごとでいい。試しに説明書に書かれた手順通りに清掃してみたが、迷わないよう工夫してあり、意外に簡単だった。

対して、壁際や隅のゴミを回転してかき出す「エッジクリーニングブラシ」や前輪部は、構造上、髪の毛などが絡んでしまい、手などで取り除かなければならないので難儀した。掃除機としての吸引力には不満はなく、動作音も思ったほどうるさくなかった。デメリットは、「ゴミ捨て・メンテナンス」の手間くらいだろう。一般的な紙パック式掃除機の紙パックの交換すら面倒だと思うずぼらな自分にとって、このハードルは少々高い。

●快適デジタルライフの強力な助っ人 整理整頓を心がけるメリットも

室内がフラットなら、ロボット掃除機は性能を十分に発揮する。今回試した「ルンバ880」は、フローリングの上に敷いたカーペットの上など、1~2cm程度の少しの段差は問題なく乗り越え、机の下なども難なく入り込んで掃除した。ただ、床に置きっぱなしだったカバンや収納スツールなど大きな障害物には、ぶつかって跳ね返った。当然ながら、それらの障害物の下は掃除されない。障害物を感知すると、速度を緩めてやさしく接触する仕組みだが、それでもガンガンと当たっているように見えた。

ロボット掃除機のユーザーが増え、インターネット上の口コミには、「部屋を整理整頓しなければ使用できず、掃除そのものより整理整頓・事前の片づけに時間がかかる」という不満の声がある。これは、解消不可能な致命的なデメリットとも、副次的なメリットともいえる。「ルンバを使うこと」が、部屋をキレイに保つための動機づけになっているのだ。部屋が乱雑になりがちな人にとって、ロボット掃除機は別の意味で心強い助っ人になるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)