左から、野田秀樹、中屋敷法仁  撮影:宮川舞子 左から、野田秀樹、中屋敷法仁  撮影:宮川舞子

はつらつとしていたりシニカルだったり、ダイナミックだったり繊細だったり、シェイクスピアを女優だけでやったかと思えば子供向けの芝居をやったり、一人芝居の連作があったかと思えば海外に飛び出していったり。広い庭を駆け回る子供のように、好奇心赴くままに“演劇”を自由に遊び回る柿喰う客の中屋敷法仁。彼には今度は何を?という楽しみがつきまとう。その期待に応えるかのように、今度は、野田秀樹の名作『赤鬼』に挑む。日本はもちろんロンドン、タイ、韓国と漂着する先々で変容しながら“人間”を映し続ける戯曲だ。

青山円劇カウンシルファイナル『赤鬼』チケット情報

「好きなタイプの作家、演出家さんだなと感じています。淡々と日常をつづる芝居が多いなか、中屋敷くんは物語の構成をしっかり考えている。若い人が『赤鬼』をやってくれるのは非常にうれしい。芝居はやってもらわないと死んでしまうわけだから、もう二つ返事ですよ。まあ、お手並み拝見かな(ニヤリ)」と作者の野田秀樹。というのも、中屋敷版は「日本人だけでやる」からだ。『赤鬼』は村八分にされた「あの女」と白痴の兄とんび、あの女を狙う嘘つきのミズカネが暮らす島に、風貌も言葉も違う赤鬼が漂着するところから始まる。彼らは、人を喰うという偽りの噂のため処刑されることになった赤鬼を救い出そうとするが……。野田いわく「ディスコミニュケーションによって共同体が崩れていく話。アジア人の共同体って、内と外でできている。だから外にいるものが鬼になる。タイや韓国でやったときは僕が鬼になったけど、わざと白いコンタクトレンズを入れたり背中にこぶがあったり、異形の者を作り上げた。そういう意味では、外の者をどう作るのか、非常に楽しみですね」。ちなみに初演の日本版は、日本人キャストの中で大柄なイギリス人俳優が赤鬼を演じたが、そのインパクトは強烈だった。そこで中屋敷版である。

中屋敷は「僕は高校演劇をやっていて、よその高校がやった『赤鬼』をたくさん観てきました。それで、この作品が流行るような時代は嫌だなって思っていたんです。戯曲から何かに気づかされたり、深く感動を受けたりということで、この作品が流行るのではなく、この作品が現実として身につまされるような社会は嫌だなと思っていたんです。でも最近、『赤鬼』がファンタジーではなくリアリティーをもつような気がしていて、日本人同士でやったらどうなるのかという恐怖感があるんです。2014年に生きているお客さんに観ていただく、2014年の物語として上演します。9.11や3.11を知らない人はいないだろうという思いのもとに」と言葉に力を込めた。

青山円劇カウンシルファイナル『赤鬼』は6月4日(水)から15日(日)まで東京・青山円形劇場にて。チケットの一般発売は5月10日(土)午前10時より。

取材・文:いちこ米