photo Yasuko Kageyama/Teatro dell'Opera di Roma photo Yasuko Kageyama/Teatro dell'Opera di Roma

イタリアが誇る名門オペラハウス、ローマ歌劇場が、8年ぶりの日本公演に向けた記者会見を5月19日に東京都内で行った。

「リッカルド・ムーティ指揮 ローマ歌劇場 2014年 日本公演」の公演情報

会見には、同劇場の終身名誉指揮者で、イタリアを代表する巨匠指揮者リッカルド・ムーティが登壇。日本公演でヴェルディのオペラ『ナブッコ』と『シモン・ボッカネグラ』を上演するにあたり、“ヴェルディのスペシャリスト”ならではの熱い思いを述べる。

「一般的にヴェルディの作品は、彼の真意とはかけ離れたかたちで演奏されているように思えるのです。世界的に有名な作曲家であるにも関わらず、あまりにもイタリア的なイメージが強過ぎるが故に、情熱的なメロディやオペラ歌手の技巧ばかりが強調される風潮にあります。モーツァルトやワーグナーの作品や芸術性に払われているような敬意がそこにはありません」

ヴェルディの芸術性を正しく表現するには、かつてトスカニーニ(※19世紀後半から20世紀前半に活躍したイタリア人指揮者)が築きあげたような楽譜に忠実に演奏するアプローチが不可欠だという。

「イタリア・オペラでは、歌手のほうが指揮者よりも強い権力をもってしまう悪い習慣があります。楽譜という絶対的なものより、歌手の技巧ばかりが評価される」と嘆く。「ヴェルディが指揮者や歌手に宛てた書簡には『私が書いた楽譜通りに、何も変えずに演奏して欲しい』と何度も書いているのです」と作曲者の言葉を引用しながら、その重要性を説く。

演出についても持論を展開するムーティ。「あまりに奇抜な演出ばかりが先行し、音楽はまるで映画のBGMのように扱われている」と現代の演出の潮流にも異を唱える。「ヴェルディのオペラは、音楽と言葉が密接に結びついたうえで成り立つものです。オペラとは、あくまで人間的ドラマ。観客が共感できる内容でなければならない。今回お見せする演出は、非常に詩的で、ストーリーを丁寧に物語っていくアプローチ。音楽に込められたドラマを感じてもらえるでしょう」と語った。

最後に「現在消滅しかけている演奏のアイデンティティを皆さんにお聞かせしたい。50年の年月をかけてヴェルディの音楽をいかに演奏したらよいかを考え続け、歩んできたものの心からのメッセージです」と強い信念の言葉で締め括ったムーティ。イタリア・オペラの威信をかけた舞台に期待したい。ローマ歌劇場 日本公演は、5月20日(火)より6月1日(日)まで全6公演を開催。

■リッカルド・ムーティ指揮 ローマ歌劇場 2014年 日本公演
・ヴェルディ作曲『ナブッコ』
5/20(火) 18:30 東京文化会館 大ホール
5/30(金) 15:00 NHKホール
6/1(日) 15:00 NHKホール
・ヴェルディ作曲『シモン・ボッカネグラ』
5/25(日) 15:00 東京文化会館 大ホール
5/27(火) 18:30 東京文化会館 大ホール
5/31(土) 15:00 東京文化会館 大ホール

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