左から、馬場徹、早乙女太一  撮影:源 賀津己 左から、馬場徹、早乙女太一  撮影:源 賀津己

傑作ホラーとして知られる『怪談・にせ皿屋敷』が17年ぶりに上演される。番町皿屋敷を下敷きにして人間が起こす悲しい喜劇を描き、伝説となったこの舞台をよみがえらせるのは、早乙女太一と馬場徹。今の演劇を牽引する若きふたりは、どんな勝負を挑むのか。

舞台『怪談・にせ皿屋敷』チケット情報

舞台は江戸時代。遊び放題で金遣いの荒い旗本・青山播磨の悪行を隠すために、家宝の皿を割った女中のお菊を使って、幽霊話を創り出そうとすることから物語は始まる。このイカれた殿様を演じるのは早乙女。「こんな思うがまま生きてるような役は初めてなので、本性とか欲とか、自分ですら知らない自分をむき出しにしてやってみたい」と意気込む。そして、怪談の仕掛ける園部上総之介を演じるのが馬場。「僕にとっては初めての悪役。悪役の負け様に憧れていたので、いろんな悪役を勉強して臨みたい」とこちらも意欲的だ。

2013年の明治座公演『神州天馬侠』で出会って以来、今度で4度目の共演となるふたり。わずか1年の間に急速に距離を縮めた。「馬場さんは、舞台の上での戦い方が美しいんです。でも、まだいろんな面を隠し持ってると思うので、今回、腹黒いところが見られるのが僕も楽しみ」と早乙女が笑いながら挑発すれば、馬場も、「太一くんはクールに見えますけど、大衆演劇のほうでは色んなことをやってるので、この難しい役も問題ないと思います」と、気心が知れた同士ならではの答えを返す。また、遠慮のない仲だからこそ、「“ここまで踏み込んでも絶対返してくれる”という信頼があるし、“そこまでやるんだ!?”っていう驚きを、太一くんは与えてくれる」と馬場。「芝居は嘘を描いてるんですけど、それをやってる僕たちに嘘はないというか、本当にそのときの感情とか自分のすべてをぶつけてやりたいので。今回も、心許せる人たちのなかで、計算せず、包み隠さず、大げさじゃなく命をかけてやりたいと思ってます」と、早乙女も馬場との芝居に期待を寄せる。

にせの幽霊話に翻弄されるというこの物語には、現代へのメッセージも含まれる。「いろんな情報が存在して、何が嘘で何が本当か見えにくくなってる世の中だから、自分の判断力とか、いろいろ見つめ直せる作品になるんじゃないかと思ってます」と真剣に語る早乙女。馬場もまた、「いろんな情報があふれてるからこそ、あいつらだけは舞台で本当のことをやってると思ってもらえるように努力しないと」と、最後に力強く誓った。

公演は6月19日(木)から23日(月)まで東京・青山劇場にて。チケット発売中。

取材・文:大内弓子

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