米本社のデビッド・フリーア アジアパシフィック&日本担当コンシューマバイスプレジデント

スマートフォンやタブレット端末など、インターネットにつながる端末が増えたことで、再び活況を呈しているセキュリティソフト市場。メーカー各社は、OSが異なる複数の端末に同時に対応することができるソフトを発売し、需要に応えている。なかでもとくに重きを置いているのは、スマートフォン向けのアプリだ。パッケージのPCセキュリティソフト販売に力を入れることで、2011年秋以降、順調に販売本数を増やしているシマンテックで、アジアパシフィック&日本担当コンシューマバイスプレジデントを務めるデビッド・フリーア氏に日本のビジネス攻略について話を聞いた。

BCNランキングによれば、シマンテックは、セキュリティソフトの販売本数シェアで2011年10月に34.1%でトップを獲得し、11月は37.2%、12月は36.4%でトップを走り続けている。

好調の理由は、昨年9月16日発売の「ノートン インターネット セキュリティ 2012」だ。BCNランキングの製品別販売本数シェアで、10月に14.7%、11月に15.7%、12月に14.9%のシェアを獲得してトップを維持している。

「ノートン インターネット セキュリティ 2012」は、前バージョンと比べてスキャン時間が30%、ブート時間が15%、ファイルのコピー時間が24%短くなるなど動作が軽く、また機能面でも、どのPCからでもプロファイルにアクセスできる「ノートン IDセーフ インザ クラウド」、リモート管理・設定に対応する「ノートン マネージメント」、独自のレピュテーション技術で悪意あるソフトウェアを自動的に特定して遮断する「ノートン インサイト」、ダウンロードしたすべてのファイルの安全性をインストール前にチェックする「ダウンロード インサイト」などを搭載している。

「ノートン インターネット セキュリティ 2012」が売れている理由について、フリーア バイスプレジデントは、「日本では、販売チャネルを徹底的に強化してきた。他社に比べ、それぞれのチャネルでバランスよくビジネスを手がけていることが好調の要因だ」と自信をみせる。

シマンテックがカバーしているチャネルは、家電量販店経由の「リテール」、直販サイトや通販サイト経由の「オンライン」、通信事業者のサービスを通じて提供する「キャリア」、PCにバンドルする「OEM」の4種類。フリーア バイスプレジデントは、「他社はこの4種類のなかで『リテール』を縮小しつつあるが、当社は最重要視している。ほかのチャネルとバランスを取りながら、家電量販店とのパートナーシップを深めている」とアピールする。

そのことを示す取り組みが「一貫した価格づけ」だ。価格競争には乗らずに、「安定価格を保っていくことが重要」としている。当然ながら、その根拠となるのが「価格を下げなくても十分に対抗できる機能」(フリーア バイスプレジデント)だ。

チャネル戦略について、フリーア バイスプレジデントは「4種類のチャネルに、常にアンテナを張り巡らしておくことが重要だ」という。各チャネル向けの組織と人員を整備し、「社内で各組織の連携を強め、どのチャネルに対してどのようにリソースを投入すべきか、常に考えている」。

4種類のチャネルを使ってビジネスを手がけるというのは、「今あるリソースを最大限に生かせるメリットがある」からだ。今は、家電量販店経由に商機があるとの判断で「リテール」に力を入れている。だからパッケージソフトの販売が好調なのだ。しかも、ほかの販路を切り捨てず、伸びると判断すればそこにリソースを投入する。これが、シマンテックの日本市場での取り組みだ。(佐相彰彦)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。