『Goodbye to Language』

ヌーヴェルヴァーグの代表として世界中の映画通から尊敬を集めるジャン=リュック・ゴダールの最新作『Goodbye to Language』が、カンヌ映画祭のコンペ作品として上映された。

ゴダールの作品がコンペ部門で上映されるのは、2001年の『愛の世紀』以来。今作には、3Dテクノロジーを使用。83歳のゴダールは、2013年の短編でも3Dを使っており、新しいテクノロジーにも好奇心豊かなようだ。

上映時間わずか1時間10分のこの映画は、ビビッドな色合いと映像の遊びに満ちており、実験的ビジュアルアートという感じ。3Dも、あえて極端な使い方をし、さらに、ふたつあるレンズでそれぞれ違う映像をとらえ、観ている側にはそれが重なって見えるような撮り方をしてみたりしている。

わかりやすいストーリーはなく、客船、駐車場の風景、男女のヌード、犬のアップ、血が流れるバスタブなど抽象的なシーンが次々に展開されるが、主な登場人物は、男性、女性、そして犬。プレス向け資料でゴダールは、「アイデアはとてもシンプル。既婚女性と独身男性が出会い、恋をし、けんかをし、犬が迷い込んできて季節が過ぎ、男女がまた出会い、犬も入ってくる。そこで元の夫がすべてをぶちこわす」と説明している。

ゴダールはプレミアに出席せず、予定されていた公式会見も中止されたが、プレミア上映は好評。異質な作品を、審査員は、果たしてどう受け止めるのか。

取材・文:猿渡由紀