運動が好きだと毎日の生活も楽しくなる子ども時代。親はどう関わると、体を動かすことを楽める子に育むことができるでしょう。

今年の2月『とび箱・鉄棒・マット運動上達のコツ50』を上梓した、アテネオリンピック金メダリストの米田功さんにコツをうかがいました。

能力の差ではなく経験の差

――さいきんの子どもたちの運動能力にはどのような傾向がありますか。

能力そのものの差は感じないし、昔に比べて能力が低下しているとも思いません。やったことがあるかどうかの差が大きいですね。
側転をできない子が増えていてびっくりしました。放課後などに公園で遊んでいると誰かのマネをしてできていくものだったと思うんですよ側転って。今はマネをする機会がない。
そういった機会があるかないかで体育の出来が決まる印象があります。

たくさん遊べば勝手に力はついてくる

――習い事をせず家庭の努力だけでできることはありませんか。

運動をさせたいと思うなら習い事をたくさんさせるより、親が一緒に遊ぶことのほうがずっといいんですよ。
川に連れて行けば自然と石投げしてみようかと思うし、山に登ったり公園に行ったりすればスキップやかけっこをしたくなる。勝手に興味をもって体を動かしたくなるものだと思います。

――著作では運動を楽しむことはもちろん、頭で考えながら動くことも大切にしていますよね。

基本的には1つのことをやりながら2つのことをできるようにと考えています。
縄跳びをしながら足をグーパーグーパーと閉じたり開いたり。できるようになったら、さらに口で「グーチョキパー」と言えるようにする。
同時進行でできることを増やしていくと、大変なときにも、とっさにいい判断ができるようになるんです。

――2つ以上のことをできるようにするために大人ができることはありますか。

昔の遊びをすることですね。「せっせっせーのよいよいよい」なんて、まさにそうですし。お手玉は右手と左手で同時にちがう動きをするからできます。「だるまさんがころんだ」ではストップモーションの動きを学べます。
昔の遊びには子どもが体を動かすときに必要なことがつまっている。理にかなったものなんですよ。

――ゴム跳びや、チョークで円を描いてけんけんぱなども楽しいですね。

お母さんやお父さんがやれば子どももやりたくなると思います。興味を示すことは今も昔も変わらない。ただ、今はTVやスマートフォンのゲームが先に来てしまいがちなのでしょう。
テレビゲームは静かになるのでラクかもしれませんが、子どものためになっているのか考えてしまいますね。ほんとうに子どもにとってよいことをしたいのであれば、親ががんばって一緒に遊ぶのはだいじな気がします。