スパイク・ジョーンズ監督、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー

来日中のスパイク・ジョーンズ監督が29日、都内で行われた最新作『her/世界でひとつの彼女』の特別試写会に出席し、本作を絶賛するスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと対面を果たした。ジョーンズ監督の来日は、『かいじゅうたちのいるところ』のプロモーション以来4年半ぶり。映画は人間と人工知能の恋愛を、センシティブに描いたラブストーリーだ。

その他の写真

「普通の人間が異世界に身を置き、非日常的なパワーを発揮する点は、ジブリ作品と私の作品は似ているかもしれない」とジョーンズ監督。鈴木氏は「スパイク監督の主人公は、一貫してうだつが上がらず、社会に置き去りにされた存在。そんな人物に、大きな奇跡が起こり、世界が変わるからすごく好きなんですよ」と意気投合した。

近未来のロサンゼルスで暮らす、バツイチ男のセオドア(ホアキン・フェニックス)が、最新型人工知能“サマンサ”と出会い、日常生活をともにしながら、次第に特別な感情を覚え始める…。「素晴らしい作品ですよね。最初は普通の人間が、コンピューターに恋なんてできるのかと疑りながら観たんですが、ちゃんと成立しているから感動した」(鈴木氏)。

サマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが担当しており、「もともと彼女のファンだから、『声だけじゃなくて、顔も見せてよ』って思ったけど(笑)、これなら、コンピュータに恋できる」とほれぼれ。また、本作のテーマは“孤独”だと指摘し「技術革新が進む時代、孤独を描く彼の映画は意味をもつ。実は今、ジブリが作っている『思い出のマーニー』もまさに孤独がテーマになっている」と共鳴していた。

これに対し、ジョーンズ監督は「孤独は感情を分かち合うことで、埋められるはず。どんなに飛躍的なアイデアであっても、主人公がリアルであれば成立すると思うし、そのためには作り手がまずは共感しなければ。夢を映像化するのは、まさにチャレンジ。常に模索している」とクリエーターとしての心情を熱弁していた。

『her/世界でひとつの彼女』
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

取材・文・写真:内田 涼