ジャ・ジャンクーが『罪の手ざわり』を語る

2014.5.30 14:49配信
ジャ・ジャンクー監督

世界の映画祭で数々の受賞歴を持つ中国の名匠、ジャ・ジャンクー監督。最新作『罪の手ざわり』が昨年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した彼は、これでベルリン、ヴェネチアとあわせ世界三大映画祭すべてで受賞を果たす偉業を成し遂げた。その快挙を達成した新作について監督自身は「新たなチャレンジに取り組めた一作」と位置づける。

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今回の作品は、近年、中国で実際に起き、本国で広く知られる4つの事件を基にしている。この4つの事件に着目してピックアップした理由をこう明かす。「インターネットの普及で、これまで報じられなかったような小さな事件も日々伝えられるようになりました。その中で、改めて感じたのは世界が暴力であふれていること。大きな紛争や戦争から、小さないざこざまで途絶えない。そのとき思ったのです。おそらくこれまでの歴史から一瞬たりとも消えたことのない“暴力”について自分も1度深く向き合い、考察して、しっかりと描いてみようと」。

扱った事件はすべて人の死が絡む悲劇。貧富の差、汚職、都市生活の孤独など、中国の光と闇を背景にしながら、欲望、憎悪、対立、尊厳といった人間の本質に肉薄して描き出す内容は、単なる他国の事件簿で片付けられない。国を問わず多く人間がそこに何かを見い出すだろう。そういう意味で、ともするとどこか中国の現状で止まる印象もあったジャ・ジャンクーの過去作品をはるかに越えた普遍性を本作は勝ち得ているといっていい。「確かに自分としても視野が広がったというか。各国の映画祭の観客の意見で、世界の人々の心に届いている手応えがありました。“芸術を通じて、世界中の人々の心はつながることができる”。そう私は固く信じている。今回はそういう作品に近づけた気がします」。

その中で本格的なヴァイオレンス演出に挑んだり、いままで未使用のカメラを使ったりと初体験にも果敢にトライ。これもまた新境地を感じるに十分だ。「ステディカムで撮影する映像がどうも好きになれなくてずっと敬遠してきたのですが、今回は撮影監督の進言もあって取り入れてみました。結果としては登場人物の心情に呼応するような映像となってくれて大正解。このことをはじめ今回は今後につながるいろいろと発見のある現場になったことは確かです」。

間違いなく今世界の映画界の最前線に立つ存在となったといっていいジャ・ジャンクー監督。その新境地を切り開いた1作にぜひ触れてほしい。

『罪の手ざわり』
5月31日より渋谷Bunkamuraル・シネマにて公開

取材・文・写真:水上賢治

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