『十一ぴきのネコ』舞台より 『十一ぴきのネコ』舞台より

1月10日、東京・紀伊國屋サザンシアターにて、ミュージカル『十一ぴきのネコ』が初日の幕を開けた。この舞台は1年を通じて8本の井上作品が上演される「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」の第1弾となる。また、気鋭の演出家・長塚圭史が初めてミュージカルの演出を手掛けたことでも話題となった。

『十一ぴきのネコ』チケット情報

本作は馬場のぼるの同名絵本が原作。1969年に井上ひさしが脚本を手掛けた人形劇としてNHKで放送され、その後、劇団テアトル・エコーが1971年に初演している。物語はお腹を空かせた十一ぴきのネコたちが大きな魚を求めて大冒険の旅に出るというストーリー。北村有起哉、山内圭哉ら個性派俳優たちがネコに扮し、「ニャーニャー」と舞台上を所せましと駆け回り、時には客席も走り回ったりと劇場内は笑いと熱気に包まれた。長塚の演出は、絵本から飛び出してきたような世界を舞台上に作り出し、シーンが変わるごとに次々と新しい仕掛けで観客を魅了した。終盤、笑いに包まれていた場内が衝撃のラストシーンで静まり返る。井上ひさしが現代に送る痛烈なメッセージに心を奪われていた。

長塚は「井上ひさしさんの人間観察力の深さが詰まったこの作品を上演することは、非常に意義があることだと感じています。政治・経済が破綻し、危うい状況に置かれている今の日本に、井上さんの鋭い社会批評はぐさりと突き刺さることでしょう。劇中の音楽はどれも素晴らしく、誰もが楽しめる娯楽作品でありながら、我々日本人がこれから何をすべきかを問う、非常に素晴らしい作品です。観客の皆さんと共に作り上げていく作品ですので、ぜひ劇場に足を運んで欲しい」とコメントした。また、出演の北村有起哉は「僕ら若い世代の俳優達によって、井上さんの作品を上演できることを大変嬉しく思います。いい年をした俳優達が、汗をかいて走り回り、ネコとして舞台上でたくましく生きる姿を観に、ぜひ劇場に足を運んでください。普段は舞台を観ない、若い世代の方々にもお勧めの舞台です!」とアピールした。

公演は同劇場にて1月31日(火)まで上演。その後、2月11日(土・祝)から2月12日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて公演を行う。チケットは発売中。